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書評 「奇跡の本屋をつくりたい」 [読書記録]

電子書籍を買ったことがない。
それなりの本好きで、
空いた時間があれば、そうしていなければ損であるかのように本を開くが、
それが紙でないと読んだ気にならない。

Amazonは使う。
本屋にない本もAmazonにはあり、
狙った本をすぐに手に入れようとしたら、リアル書店よりこちらになる。

本屋が好きだ。
はじめての街に降りると、まず本屋を探す。
いい本屋があれば、その街自体の評価が上がる。
困った本屋しかなければ、その街も困った街かと思い込む。
もし、本屋がなければ、本屋がない街と理解する。

本書「奇跡の本屋を作りたい」の副題は、
「くすみ書房のオヤジが残したもの」である。
著者の久住邦晴さんは、札幌にあった書店「くすみ書房」の店主。
「なぜだ?売れない文庫フェア」
「中高生はこれを読め! 」
といった企画が評判を呼び、日本一有名な書店主と呼ばれた時期もあったという。
久住さんは2017年に亡くなっておられ、本書は遺稿をまとめたもの。
経営に、病気に苦しんだ久住さんの魂の叫びが詰まっている。

これを読むと、個人で書店を経営することの大変さがしみじみわかる。
札幌に所在し、
企画が話題を呼び、
マスコミにも何度も取り上げられ、
店主自体がかなりの有名人となっても、
経営は厳しかったのだから。
もっと小さな街で、細々と開いていたら、さらに困難な経営となることが目に見えている。

それでも、街には本屋があってほしい。
自然と人が集まる場所であってほしい。
巣立って行った子が、何年かぶりに故郷に帰ってきて、まずは訪れるような場所であってほしい。
本屋を続けること自体が奇跡なのかもしれないが、本屋がない街は悲しい。

久住さんは病に倒れ、奇跡への道のりを歩み続けることができなかった。
それなら、残された我々が、つないでいくしかない。
できることはきっとある。

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