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書評 「不死身の特攻隊」 [読書記録]

学生の頃、鴻上尚史さんがパーソナリティを務めていた「オールナイトニッポン」をよく聴いていた。
1部に移動してから、「10回クイズちがうね」や「どっちを選ぶ 究極の選択」などといったコーナーが評判となったが、私が聴いていたのは2部の時代。
2部は深夜3時からだから、今思うとよく起きていたなあと思うが、それでも聴いていたのは当然ながら面白かったからである。

番組では、当時まだ無名だった鴻上さんが、若気の至りでいろいろやらかしていた。
放送終了後の午前6時頃から日比谷公園でジェンカを踊る、といった無駄な企画や、
リスナーからの投稿で作られる「裏コピーコーナー」などは、えらく楽しかった。
おちゃらけていた鴻上さんが、当時グイグイ来ていた映画監督の森田芳光さんとマジの対談をしたときは、いい意味で本性が見えた気がした。

その後鴻上さんはどんどんメディアに取り上げられるようになり、文化人のような扱いをされるようになった。
しかし、私の中の鴻上さんは、オールナイトニッポン第2部のパーソナリティだったイメージが強く、その鴻上さんが特攻隊のことをどういった切り口で書かれているのか気になった。
独自の視点があるのだろうと期待した。

この本「不死身の特攻兵」を読んで、感動される方もおられるだろうし、
「読んでよかった」と思われる方もおられるだろう。
実際、よく売れたようだ。
しかし、鴻上さんならではの見方を提示されているのではないか、との私の期待は空振りだった。

それなりのボリュームがある本なのに、内容は、
「特攻隊はやっちゃダメな作戦だった」
「そんな作戦をやっちゃう日本はダメな国だった」
ということに尽きるからである。
ふぅ。

そのうえで鴻上さんは、同じ轍を繰り返そうとしているといった警告を発せられている。
はっきりは書かないまでも、政権批判なのはすぐにわかる。
よくあるやつだ。
そこら中にあるやつだ。
それが悪いとは言わない。
しかし、あの鴻上さんが。

しまいには、精神論が横行していると夏の甲子園までやり玉に。
あのキレキレだった鴻上さんが・・・。

書かれていることは、まあ、正論なのだろうと思う。
正しいことなのだろうとも思う。
正直なところ、この本を読んで私はとてもがっかりしたが、それも勝手に鴻上さんに多大な期待をしたのが悪かったのである。
私はこの本の読者としてはふさわしくなかったのだろう。
悪いのは私の方である。

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