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映画評 「JUNK HEAD」 ~映画ファンは押さえておきたい逸品~ [映画評]

東京に緊急事態宣言が発令され、新作映画の公開が止まった。
映画ファンとしては、去年に続いての非常に残念な状況である。
しかし、こうした状況でなければ本作に手が回らなかったかもしれない。

「JUNK HEAD」は、堀貴秀さんという方が、ほぼお一人で制作された作品であるという。
映画を作るのは大変なダ行である。
メジャー系の映画のエンドクレジットを見ると、膨大な数の人間が携わっていることがわかる。
数十人どころではないこともある。
それをお一人で。
原案、絵コンテ、脚本、編集、撮影、演出、照明、アニメーター、デザイン、人形、セット、衣装、映像効果、その他もろもろを。

ジャンルは、ストップモーションアニメ。
ストップモーションアニメとは、Wikipediaの定義によれば、
「静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしカメラで撮影し、あたかもそれ自身が連続して動いているかのように見せる映画の撮影技術」
のことをいう。
とんでもない手間がかかることは想像に難くない。
堀さんは、
独学で映画作りを学び、
7年の歳月をかけて本作を完成させたのだという。
エンドロールで、その制作過程の一端が公開されているが、口あんぐりである。

内容は、ユートピアの反対、いわゆるディストピアを描いたもの。
この映画の世界では、絶滅の危機に瀕した人類が地上で暮らし、地下には人工生命体が住んでいる。
遺伝子操作により永遠の命を得た代償として生殖能力を失った人類は、新種のウイルスによって人口の30パーセントを失ってしまい、その打開策を探るために地下にヒントを探りに行く、
というのが大体のストーリー。
正直なところ、筋立てはそれほどでもない。
似たような展開が続き、意識が飛びそうになった瞬間もあった。

しかし、そんなこんなを突き抜けて、なんともすごい作品である。
人が、なにかを心底作りたいと思い、
それに心血を注げば、
たった一人でもここまでのものができるのだということに心動かされる。
発想にうならされ、
ユーモアにくすりとさせられる。

ちなみに本作では、声優も堀さんがほとんど務めておられる。
そして字幕付き。
どういうことなのかは、本編をご覧になってお確かめいただきたい。
観る価値のある作品である。

なんでも三部作らしく、確かに映画もこれからというところで終わっている。
次作が完成するまで、また数年かかるのだろうか。
何年でも待つ、というファンがきっと生まれただろう。

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