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映画評 「スパゲティコード・ラブ」 [映画評]

「スパゲティコード」とは、Wikiによれば、
プログラムのソースコードがそれを制作したプログラマ以外にとって解読困難である事を表す俗語、
とされている。
スパゲティが絡み合っている様子から連想された言葉であろう。
スパゲティと言えば、ガンズ・アンド・ローゼズのアルバム「ザ・スパゲッティ・インシデント?」を思い出すが、この映画とは関係がない。

本作は、13人の若者たちの青春群像劇。
大勢の登場人物をオムニバス的に描く映画は少なくないが、13人とはなかなかの大所帯。
その13人はこんな感じの面々。

・アイドルへの思いを断ち切ろうとしているフードデリバリー配達員
・夢をあきらめきれない女性シンガーソングライター
・定住しないノマド生活者
・両親が有名人の広告クリエイター
・思うように仕事が回ってこない若手カメラマン
・片思いをしている女の子と噛み合わない会話を続けている高校生
・空虚感にとらわれ死に憧れている女子高生
・パパ活が忙しくなっているモデル
・東京にあこがれる不登校の高校生
・毎日コンビニのイートインで時間をつぶしている中学生
・失恋のショックで、引きこもりになった女性
・ストレスで過食気味になった引きこもりの女性
・恋人に尽くすことだけが生きがいの喫茶店スタッフ

この面々が複雑に絡み合う、のかと思いきや、別にそうではなかった。
短い間隔でどんどんシーンは切り替わり、それぞれのストーリーがバラバラに提示される。
最後まで収束することはなかった。
スパゲティコードじゃないじゃん、と小さくツッコミ。
しかし、それがなぜか心地よい。

13人も主要な登場人物がいては、とっちらかってしまうし、感情移入も難しくなりそうだが、
この映画は不思議な均衡で成立していた。
伏線が見事に回収されるわけでも、
物語がどこかに集約されるわけでもなく、
ほぼ投げっぱなしなのだが、それはそれで私には届いた。
「浅い」「甘い」「薄い」「PVをつないだだけのような作品」
といった感想を持たれる方は少なくないだろうし、その気持ちもわかるが、
私は悪くないと思った。

監督は、CMやミュージックビデオを中心に活躍してきた丸山健志さん。
本作は、確かにそれっぽい作りだったが、それだけではないものも感じた。
次回作が楽しみ。

主演が誰とは言いにくい映画だが、主要キャストは誰もがなかなか印象的だった。
そのことだけでも映画が成功している証拠と言っていいかもしれない。
「ちはやふる」組の清水尋也さんが物語を回していただろうか。
清水さんは「ポンポさん」のジーンの声でもある。
「ドライブ・マイ・カー」での演技が鮮烈だった三浦透子さんが歌を披露されている。
これがなかなかイケる。

「スパゲティコード・ラブ」は、東京に生きる若者たちの青春群像劇。
都市生活をスタイリッシュにオムニバス的にバラバラに描くというと、失敗例が累々と重なるパターンだが、
本作は例外的に成功していると感じた。
刺さったとまでは言えないが、十分楽しかった。

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