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「天国にいちばん近い島」が揺れている [ヨモヤ]

先日、ニューカレドニアにてフランスからの独立を問う住民投票が行われた。
こうした投票が行われれば、通常はナショナリズムが高まって接戦になるはず。
しかし、ネットニュースの見出しを見ると、
「ニューカレドニア、仏からの独立 圧倒的多数で否決」
とのこと。
へえ、そんなことあるんだ、と記事を読み進めると、
独立賛成票は、なんとわずか3.5%だったという。
確かに圧倒的である。

ニューカレドニアの独立の是非を巡っては、あらかじめ3回の住民投票を行うことが決まっていて、
今回が最後の3回目。
この結果を受けてフランスのマクロン大統領は、
「住民はフランスへの残留を選択した。彼らはそれを自由に決定した」
「長年にわたり分断が続いたことは無視できない。これから移行の時が始まる」
とおっしゃったという。

しかし、独立賛成が5%以下とはあまりにも差があり過ぎる。
ちょっと違和感を覚え、他の記事も読んでみた。
すると、まったく違う様相が見えてきた。

まず、過去2回の投票結果だが、
独立賛成票は1回目(2018年)が43.3%、
2回目(20年)が46.7%とかなり拮抗していたようだ。
この流れからすれば3回目は間違いなく接戦になるはずで、3.5%などということがあるわけはない。

どうやら今回は、投票を実施したこと自体に疑義があるようだ。
独立賛成派が多い先住民カナクの方々は、新型コロナウイルス感染拡大とそれにより多数の死者が出たことを受けて、
12カ月間の服喪期間を設定し、住民投票を延期することを求めていたのだという。
「服喪期間」とはあまり聞かない言葉だが、そういう慣習が島にはあるらしい。
独立反対が93%だったとのことだが、
そもそも賛成派は投票をボイコットしていたようだ。
43%という低投票率がそれを物語っている。
独立推進派の方は、
「われわれにとって、これは3回目の住民投票ではない。合法的な住民投票は18年と20年の2回のみだ。今回の住民投票はフランスの投票であり、われわれの投票ではない」
と述べている。

3回までと決められている大切な住民投票の3回目を、
どうして強引に行ってしまったのだろう。
もちろん言い分はあるのだろうが、禍根を残してしまったことは間違いない。

ニューカレドニアと言えば、日本では「天国にいちばん近い島」として知られている。
美しく、平和な島というイメージがあるが、
どうやらのんびりとしてばかりはいられそうもない。

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