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映画評 「偶然と想像」 [映画評]

本作は、今や世界で注目を集める存在となっている濱口竜介監督の作品。
前作「ドライブ・マイ・カー」は、カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したほか、ロサンゼルス映画批評家協会作品賞など、世界中の映画賞で高い評価を受けている。
「偶然と想像」も、ベルリン国際映画祭で審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞した。

この映画は、短編オムニバス作品。
「偶然」と「想像」という共通のテーマを持つ、異なる3編の物語から構成されている。
3作とも登場人物は少なく、場面転換もさほどない。
映画の中心は主要登場人物による会話である。
1本目はテンポのある激しい会話、
2本目は演劇のようなゆっくりとしたセリフ調の会話、
3本目はドラマがかった会話。
ストーリーというより会話の面白さでつないでいく作品で、私はたっぷり楽しめた。

じっくり観るタイプの映画であり、アクション映画が好きな人からすればかったるくて仕方がないかもしれないが、会話劇には別のタイプの緊張感がある。
なんだかひりひりするものが伝わってきた。

一本目のタイトルは『魔法(よりもっと不確か)』。
男女の愛と憎しみをぶつけ合うやり取りは怖くも可笑しくもある。
出演は、古川琴⾳さん、⽞理さん、中島歩さん。
古川さんの女優さんらしい一面がうかがえた。
中島さんは二枚目俳優として地域を築きつつあるようだ。

二本目のタイトルは『扉は開けたままで』。
小説を読み上げるシーンがあるのだが、これがなかなかの文章。
監督の才能のほとばしりを感じさせられる。
出演は、渋川清彦さん、甲斐翔真さん、森郁⽉さん。
大学教授を誘惑する主婦を演じる森さんがよかった。

三本目のタイトルは、『もう⼀度』。
勘違いから始まる二人の女性の身の上話。
しかし本当に勘違いなのか、観ている方は混乱させられる。
出演は、占部房⼦さん、河井⻘葉さん。
二人の息のあったやり取りはずっと観ていられる感じだった。

「偶然と想像」は、今が旬の作り手のきらめきにあふれた作品。
頭でっかちな感じが苦手な方もおられるかもしれないが、
ややこしく考えずに観て、十分に楽しめると思う。
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