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いつまで経っても誤解の多い内部留保のこと [ヨモヤ]

企業の内部留保が積み上がっていることを問題視する向きがある。
貯めこんでばかりいないで、もっと従業員や社会に還元しろ、
というわけである。
企業側からすれば、どのくらいの額を蓄えるかということはすぐれて経営判断にかかる問題であり、
そうした議論は大きなお世話であろう。
しかし、内部にお金を貯める一方なのに給料は上げない、という状況が続けば、
あれやこれや言われるのもある程度仕方がないことかもしれない。

ただし、内部留保に課税しろ、とまでなると、これはさすがにどうか。
企業が内部留保にしているのは、利益剰余金の部分。
これは稼いだお金から税金を払った残りである。
税金を納めていない企業も少なくない中、
しっかり利益を上げて税金を納めた挙句、
その残りからさらに税を取ろうというのは、あまりにも無理筋であろう。

内部留保については誤解も多い。
一般の人が勘違いするのはやむを得ないとして、
政党の政策でも「なに、この理解?」と思わせられることが多いのは残念である。
さらに、新聞の記事でも、「はて?」と思わせられることがある。
例えば、最近の日本経済新聞でこんな記事があった。

賃上げをすれば、法人税率を軽減するという政策を伝える流れのなか、
『財務省の法人企業統計によると日本企業の20年度の利益剰余金(内部留保)は484兆円と前年度比2%増えた。自民党内から「これを使わない手はない」との意見が出ていた。』
というのである。
これを読むと、
賃上げをすれば内部留保が減る、
若しくは、
企業は内部留保から賃上げ分をねん出する、
と理解されているように思えてしまう。

実際には、内部留保となるのは、すでに書いたように利益から税を引いた分であり、
内部留保を取り崩すのは赤字となるケースである。
今回の政策は、法人税を減らすというものなので、内部留保を減らすものではなく、
むしろ増やす可能性さえある。

日本経済新聞の記者さんが誤解されているとも思いにくいし、
もし書き手が誤解されていたとしてもそれが校閲を通るとは思いにくい。
だから今回の記事も何か別の読み方があるのだと考えたい。
しかし、知らない人が読めば勘違いしてしまうような記事はあまりよくはないだろう。

正しい政策は正しい理解から。
当たり前のことだが、これが大前提である。
新聞をはじめとするマスコミは、事実をしっかり伝えていただきたい。
政治家の方々は誤解を利用するような政策を打ち出すのは止めていただきたい。
ごくささやかな願いである。

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