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映画評 「由宇子の天秤」 [映画評]

天秤(てんびん)とは、量りたい物体と、錘とを右左にかけてつりあわせることによって、物体の質量を測定する器具のこと。
「天秤にかける」とか「両天秤」といった慣用句に使われている。

主人公の由宇子は、ドキュメンタリーディレクター。
妥協のない取材姿勢で真実に迫り、ことなかれの番組スタッフと真正面からぶつかることもある。
ごまかしを許さない生き方を貫いている女性である。
しかし、そんな由宇子の身に隠したいことが起きたとき、彼女はどうするか。
今まで貫いてきた真っすぐな道か、
現状の暮らしを守ることを優先するその場しのぎか。
それまでの自分の生き方をゆるがす選択に迫られ、
由宇子は天秤にかけることになる。

ちょっと盛り込み過ぎで、集約しきれていない面はある。
急展開がいくつかあるのだが、どれも、「へ?」と思えてしまう強引さ。
だが、そうした粗を飲み込める力がこの映画にはある。

最初から最後まで緊張感のある展開が続く。
152分という長尺で、ポンポさんにはしかられそうだが、間延び感はない。
詰め込み過ぎ感はあるものの。

主演は、瀧内公美さん。
女優さんらしい女優さんで、存在感が光る。
闇を抱える女子高生役の河合優実さんにも惹かれた。
松浦祐也さん、和田光沙さんは、衝撃作「岬の兄妹」のコンビ。
他の俳優さんたちも、失礼ながら知名度はそれほど高くないが、演技はさえていた。

監督は春本雄二郎さん。
これが長編2作目。
次作以降が大いに注目される。

「由宇子の天秤」は、作り手の思いがこもった力作。
製作費がそれほどなくても、
有名な役者さんが出演していなくても、
映画に真摯に向き合えばいい作品を生み出すことができるという好事例。
いい作品を作れば、評価してくれる人たちもきっといる。

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