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映画評 「怪物」 [映画評]

「誰も知らない」「そして父になる」「海街diary」「三度目の殺人」「万引き家族」
などの是枝裕和さんが監督。
是枝監督は、多作でありながら、常にクオリティの高い作品を送り出し続けておられる、
日本を代表する映画監督。
これまでは脚本も担当していることがほとんどだったが、
本作では「花束みたいな恋をした」の坂元裕二さんが脚本。
その坂元さんは、カンヌ映画祭で脚本賞を受賞した。

娯楽作として、十分楽しめる作品に仕上がっているとは思う。
映像は美しく、緊張感がみなぎっている。
子役が素晴らしく、
演出が冴えている。
細かい伏線が張ってあり、
それらが丁寧に回収されていく脚本もさすがである。
二回目の方がよくわかるだろうから、
リピーターとなる人も少なくないだろう。

観客は、タイトルから、
「誰が怪物なのか」
という思いで映画を観ることになる。
その段階で、監督の手のひらで踊らされている感じだが、
映画を観るのだから踊らされて結構である。
誰が怪物か、
何が怪物か、
ひょっとしたら観ている自分が怪物か、
など、いろいろ考える。

水準から観れば、間違いなくいい作品なのだが、
作り手側の
凝り過ぎ、やり過ぎ、
が鼻につくというか、逆効果になっているというか。
あんなにやらなくてよかったのに。

映画の前半は、いわばフリのような感じなのだが、
後半に納得できる形で着地されない。
ミスリードが過ぎる。
「え、どして?」
という行動が多過ぎる。
せっかくの美しい作品なのに、
あざとさが引っかかる。

出演は、安藤サクラさん、永山瑛太さん、田中裕子さんなど。
皆さんの演技に文句はないのだが、
フリの部分の不自然さがどうにも釈然としない。
子役の二人、黒川想矢くんと柊木陽太くんは素晴らしい。

「怪物」は、さすがの出来栄え。
しかし、策に溺れたというのか、策に走り過ぎたというのか。
「万引き家族」と比べると、ちょっと。

なぞかけで締めるとこんな感じ。

映画「怪物」とかけまして
元近鉄のラルフ・ブライアントと解きます。
そのこころは、
どちらもフリが大き過ぎます。

タグ:怪物
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