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映画評 「渇水」 [映画評]

本作は、貧困や親子の絆を描く社会派ドラマ。
主演は、「土竜の唄」シリーズのコミカルな演技からシリアス路線まできっちり演じ分ける生田斗真さん。
共演に、映画界に引っ張りだこの磯村勇斗さん。
門脇麦さん、尾野真千子さんらが脇を固める。
重要な役どころである幼い姉妹を演じるのは、山崎七海さんと柚穂さん。

子役の二人は頑張っていると思うのだが、
是枝監督の「怪物」を直前に観たこともあって、ゆるさが目に付く。
演技をしている感、セリフを言っている感が強過ぎて、映画に入り込みにくい。
これは子役の責というより演出側の問題。
大切な役柄の二人だけに、もっと撮り方があったのではないか。

ストーリーは、
水道料金を滞納する家庭を回って水道を止める業務に当たる生田さん演じる水道局員が、
ある幼い姉妹との出会いをきっかけに良心と職務の間で葛藤する、
というもの。
それぞれの家庭事情も相まって、割り切れるものと割り切れないもののはざまで揺れる。

門脇さん演じる姉妹の母親がどうしようもない存在で、
二人をほったらかして家にも帰らない。
日照りが続き、渇水となるなか、水が止められたら死活問題となる。
実際こういう母親はいるようだし、
子どもの貧困も大きな社会問題になっている。

世の中の負の側面に切り込む映画であり、
テレビドラマではなかなか取り上げにくいテーマをあえて扱った製作者の思いはあったのだろう。
しかし、それが作品として結実するには至らず。

クライマックスで、生田さん演じる主人公が「テロ」を敢行するのだが、
これが全くちっぽけかつ意味不明。
そのちっぽけさにメッセージがあったのだろうし、
大それたことをする必要はないのだが、それにしても。

難しいテーマに挑む意気やよし、
なのだろうが、
残念ながらうまくはいかなかったようだ。

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