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映画評 「BAD LANDS バッド・ランズ」 ~原田監督、今年もいい映画~ [映画評]

原田眞人さんの監督・脚本・プロデュースによる作品。
原田さんは、齢74歳。
去年の快作「ヘルドッグス」に続くバイオレンスもの。
2年連続、ノンストップでぶっ飛ばす。
落ち着く、ということを知らないかのよう。
もちろん、衰えるということなどまるでご存じないご様子。

特殊詐欺グループの話だが、
血縁関係や愛憎も入り交じる。
安藤サクラさんと山田涼介さんが主人公として映画を引っ張るが、
二人も完全な犯罪者であり、善玉ではまったくない。
まともなモラルなど持ち合わせていないが、
映画の主人公にふさわしい存在感がある。
安藤さんはさすがの演技。
切れ味の鋭さにひりひりする。
山田くんも情けない弟役を好演。

悪い奴が次々と出てきて、
人間関係が入り組んでくる。
生瀬勝久さんや天童よしみさんなどが、癖をたっぷりに演じられる。
あんだかんだいろいろあるのだが、ややこしい話ではない。
すっと映画の世界観に入り込める。

特殊崎グループを追う、警察の描き方がいい。
こういう作品では警察が単に敵役になったり、間抜けな存在だったりするが、
この映画ではしっかり存在感があった。

安藤サクラさんを助ける頼りになる相棒役に宇崎竜童さん。
久し振りにカッコいい宇崎さんを見せてもらった気がする。

「BAD LANDS バッド・ランズ」は、気合の入った作品。
映画らしい映画で、世界観を堪能できる。
大勢の人に観てもらいたいが、ヒットする作風でもないのも確か。
それでもこういう映画がしっかり客を集めてほしい。

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ラグビー強国に向けて厳しい見方も必要では [ヨモヤ]

ラグビーワールドカップフランス大会。
日本は1次リーグの第4戦でアルゼンチンと対戦し、27対39で敗退。
2大会連続の決勝トーナメント進出はなりませんでした。

勝負は時の運。
勝つときもあれば負けるときもある。
だから、健闘を称えたいと思う。
一方で、
前回進出できた決勝トーナメントに行けなかったのは事実。
4年前と主力選手の新陳代謝が進まなかったのも事実。
ラグビー強国に向けて、
応援する側、見る側も、いつまでも
「感動をありがとう」
でいいのだろうか。

アルゼンチン戦では、
強化試合の段階から指摘されていた「得点直後の失点」が繰り返された。
相手にしてやられた、というより、
こちら側のミスによる失点も目立った。
同じ選手に何度もやられるのもどうなのだろうと感じた。
また、世界一の練習量と言われながら、
イングランド戦でも、サモア戦でも、アルゼンチン戦でも、
最後の20分間でズルズルと失点を重ねた。

もし、こうしたやられ方を、
野球日本代表がWBCで、
サッカー日本代表がワールドカップで、
演じてしまったらどうだろう。
監督以下、激しい批判にさらされることは間違いない。

繰り返すが、
勝負は時の運である。
負けたときに、その腹いせのように選手やスタッフを責めるのはよくない。
しかし、その種目で世界の頂点を目指していこうと、応援する側も含めて本気で考えるのなら、
その敗因やチーム編成、選手育成の反省点を、
しっかり見届ける必要もあるだろう。

2019年当時と比べて、この4年間で日本ラグビーは進化できたのか。
できていないのだとしたら、それはなぜなのか。
しっかり総括すべきだと思う。
シビアな批評眼がチームを育てるのだとしたら、
応援する側の総括も必要なのかもしれない。
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税収増を還元の「?」 [公会計]

岸田首相が、経済対策の方向性について説明するなかで、
「成長の成果である税収増等を国民に適切に還元する」
とおっしゃった。
どのようなことをすることを「還元」と表現されたのかはわからないが、
減税や給付金を連想された方も少なくないだろう。
一方、鈴木財務相は、税収増の還元について、
「十分な財源的な裏付けがあるとは思っていない」
と述べられた。

企業が利益を上げると、配当という形で投資家に還元される。
これは自然なことだし、投資家も当然にそれを望んでいる。
では国家財政についてはどうだろう。

もし国家財政において、
恒常的に歳入が歳出を上回り、余剰が積み上がっている状況であれば、
税を下げるという判断がなされるのが妥当だろう。
それを還元というかどうかはさておき。
では、日本の現状はどうか。
何十年間も歳出が歳入を上回り、借金が積み上がっているのは周知のとおりである。
この状況で還元というのは、言葉の趣旨からもピンと来ない。

また、税収が増えたら還元となると、
税収が減ったらどうするのかという話になる。
その分の増税を受け入れるのだろうか。

税収が増えることは望ましいことである。
しかし、現在の日本の財政状況で、
増えたからといって還元というのはちょっと筋が違う気がする。
どういう政策を実行することが「還元」なのか、はっきりはしていないけれど。

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映画評 「沈黙の艦隊」 [映画評]

原作は、1988~96年に「モーニング」にて連載された、かわぐちかいじさんの名作コミック。
私にとってかわぐちかいじさんと言えば、「巷説麻雀新撰組はっぽうやぶれ」。
一時期麻雀漫画をけん引しておられた。

監督の吉野耕平さんは、私の大好きな「ハケンアニメ!」を撮られた方。
今回は、まったく趣の違う大作を手掛けられた。
この先がますます楽しみな監督さんである。

物語は壮大。
これを2時間に入れ込むのは無理がある。
本作は、はじめからその無理に挑戦はせず、
いきなり始めて、
中途半端に終わらせた。
続編ありきの作り方はあまり好きになれないが、
本作では一応区切りも付いていたし、ギリギリセーフか。

潜水艦ものはどうしてもそうなってしまうが、
トーンは暗く、緊張感が持続する。
外国人俳優も多く、撮影には苦労があったことと思う。
きちんとした作品に仕上げたのは監督の手腕なのだろう。

主演は、プロデュースも手がけておられる大沢たかおさん。
大沢さんと言えば、「キングダム」の王騎役が印象的だが、本作でもさすがの説得力。
笹野高史さん、酒向芳さんといったベテラン勢の安定感が映画を落ち着かせる。
ソナーマン役の前原滉さん、ユースケ・サンタマリアさんがいい味。

映画会社からすれば、吉野耕平監督は、大作でも十分に行けると踏まれたのではないか。
次回作が早くも楽しみだ。

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映画評 「夏空ダンス」 ~映画として評価する作品では・・・~ [映画評]

ウッチャンナンチャンの内村光良さんの監督作品。
映画監督として第4作に当たる。

本作は47分の短編。
劇場公開されている作品であるが、
映画として評価する作品であるかどうか微妙。
尺の短さではなく、
予算のかけ方でもなく、
出来上がったものを観たときに、これを商業映画として評価できるかというと・・・。

内村さんが、故郷の熊本の人吉のために一肌脱いだ、
というところなのだろう。
2016年の熊本地震や2020年の水害などで、大きなダメージを負った地域であり、
少しでも力になりたい、ということだと思う。
映画として成り立っているかというと、それはちょっとどうか。

短くても、
知られている俳優で出ていなくても、
低予算でも、
心の動く作品はあり、
それはまさに映画だが、
本作はそうしたものではなかった。

タグ:夏色ダンス
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なんとも美しくない侍ジャパンの監督選考 [ヨモヤ]

野球日本代表「侍ジャパン」の監督に、井端弘和さんが就任された。
井端新監督は
「お話をいただいた時にとても驚き、同時にこんなに光栄なことはないと感じた。
身に余る大役だが、自分の持っているものを全て注ぐことが日本野球への恩返しと考え、
引き受けさせていただくことにしました」
などと話されたという。

WBCで劇的な優勝を果たした栗山監督の後任ということで、プレッシャーも大きいと思う。
是非とも頑張っていただきたい。

井端さんには何の非もないが、
侍ジャパン監督の選考過程は、お世辞にも美しいものではなかった。

監督候補として報じられたのは、
イチローさん、松井秀喜さんといったメジャー経験者をはじめ、
井口資仁さん、古田敦也さん、高橋由伸さん、工藤公康さん、といった面々。
報道では、次々に断られたとされている。
それが本当なら、監督就任の要請をもらっても嬉しくはない。
「○○さんに断られて、やむを得ず私になったんでしょ」
と思ってしまうからである。
情報が漏れているのだとしたら、それはどこからなのだろう。

井端監督の就任についても、発表会見の前に報道されてしまっている。
コンセプトがまるで見えない監督探しと機密保護のゆるさを見ると、
大丈夫なのかと思えてくる。

井端監督就任にぶつけるように、巨人の監督が交代した。
別の日に発表するくらいの配慮があって当然だと思うが、
それを巨人に求めるのは無理筋だろうか。
しかも、次のWBCのときの監督は原監督になる可能性があるのだという。
新監督就任に合わせてそうした報道が流れる。
これでは井端さんが可哀そうである。

WBCで日本中を熱狂させた侍ジャパンだが、
その後がなんだかグダグダである。
大丈夫なのだろうか。

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日本株急落も経済のムードはそんなに悪くない [資産運用]

10月4日は語呂合わせから「投資の日」。
そんな日の日経平均株価は大幅下落。
前日より711円安い3万526円で取引を終えた。
とんだ投資の日になってしまい、
この株価水準は今年5月以来の安値。

下落の原因はアメリカ長期金利の上昇とされている。
景気の過熱が収まらず、
そのためアメリカでの金融引き締めが長期化するとの見方が強まり、
債券市場で長期金利が一時4.81%まで上昇。
これが嫌気された。

しかし、経済そのもののムードは悪くないと思う。
日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査で、
大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、
前回の6月調査から4ポイント改善してプラス9となり、2期連続で改善した。
非製造業は一層の改善が続く。
大企業非製造業の業況判断DIは4ポイント改善しプラス27。
改善は6期連続で、
この水準は1991年11月調査以来という。
30年ぶりの景況感というわけである。

景況感がよくても、需給が悪ければ株は下がる。
しかし、景況感がいいのに株がいつまでも下がり続けることはないはずだ。

アメリカの株安も、
景気が良すぎるので金融引き締めが予想され、
そのために下げているというもので、
経済の悪さが嫌気されているものではない。

ここでの下げはかなり厳しいが、
お先真っ暗という感じではないと思う。
買い場と見えなくもないが、果たしてどうか。

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映画評 「PIGGY ピギー」 ~客を驚かすことへのどん欲さ~ [映画評]

スペイン映画。
原題は「Cerdita」で、子豚という意味。

主人公の女子高生は、
同級生からその太った容姿(役作りもあるのだろう、ちょっとした太り方ではない)を散々にいじられ、
プールでは暴力的ないじめを受けたり、着替えを持って行かれたりする。
そのため主人公は半裸かつ裸足で帰らなければならなくなる。
そのいじめっ子たちが誘拐され、
主人公はどう振る舞うべきか迷う。

スペインの映画に馴染みがないだけに、
どこへ連れていかれるか、
どこまで見せられるのか、
途中から不安になる。
一体どうなってしまうのか。

とにかくグロイ。
しかし不快ではない。
客を喜ばせるために、
客を驚かすためにとことんやってやるという姿勢が気持ちいい。
ただ、最後はちょっと日和ったか。

観終わっても爽快な気分になれる作品ではないし、
何らかのメッセージが伝わってくる作品でもない。
残るものがあるかといえば、ない。
ないが、作り手の心意気に感じるものがある。
これでいい。

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ここのところで読んだ30冊 [読書記録]

ここのところで読んだ30冊は以下のとおり。

「13歳からのファシリテーション」 ちょんせいこ
「子どものまちのつくり方」 泉 房穂
「きみの人生に作戦名を。」 梅田 悟司
「観光の力」 半藤 将代
「西荻窪の古本屋さん」 広瀬 洋一
「ファシリテーションのすすめ」 鈴木 まり子
「株式会社ネバーラ北関東支社」 瀧羽 麻子
「ハマのドン」 松原 文枝
「15歳からの地球温暖化」 杉山 大志
「葉桜」 橋本 紡
「より少ない生き方」 ジョシュア・ベッカー
「武道は世界を駆けめぐる」 岡本 洋子
「本と店主」 森岡 督行
「売れる作家の全技術」 大沢 在昌
「株式投資の未来」 ジェレミー・シーゲル
「ぼくはこうして大人になる」 長野 まゆみ
「億男」 川村 元気
「読書革命」 金川 顕教
「十代に共感する奴はみんな嘘つき」 最果 タヒ
「しりとり」 谷川 俊太郎/和田 誠
「尾崎放哉句集」
「モダン」 原田 マハ
「仮説思考」 内田 和成
「今日死ぬのにもってこいの日」 ナンシー・ウッド
「お金の未来」 山本 康正/ジェリー・チー
「仕事が速いチームのすごい仕組み」 三木 雄信
「脳が認める勉強法」 ベネディクト・キャリー
「絵になる術と建築」 山田 雅夫
「愛と人生」 滝口 悠生

「西荻窪の古本屋さん」を書かれた広瀬洋一さんは、杉並区西荻窪で「古書音羽館」を経営しておられる。古本屋さんの思いや裏側がのぞける一冊。

橋本紡さんの「葉桜」は、書道を背景とした青春小説。静かで熱い時間が流れる。

「十代に共感する奴はみんな嘘つき」は小説だが、著者の最果タヒさんは詩人としても有名な方。大好きな映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」の原作者でもある。本作でも研ぎ澄まされた言葉で若者の心情を綴る。

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否定的な意見に納得も パの3位争いが熱い [ヨモヤ]

2023年シーズンのプロ野球は、パ・セ両リーグとも優勝チームが独走した。
10月1日の試合終了時点で、
パではオリックスが2位に15.5ゲーム差、
セでは阪神が2位に12ゲーム差を付けている。
5ゲーム差以上開けばある程度のセーフティリードと言えるだろうが、
これが10ゲームを超えるとなると、
優勝争いという点では興醒めである。

これだけぶっちぎりのシーズンになると、またぞろ出てくるのが、
クライマックスシリーズ不要論。
シーズンを圧倒的な強さで優勝したチームが、
はるか後方にいたチームに短期戦で破れて日本シリーズに進出できないとなると、
理不尽感を覚えるのは理解できる。
しかし、もうすっかり定着した仕組みであり、
このおかげで消化試合が激減していることも事実である。
エンタメであり、興行であるプロ野球において、
最後までファンを楽しませる仕組みとして、
クライマックスはしっかり機能している。
また、そこで負けたとしても、
シーズン優勝はシーズン優勝である。

優勝できなかったチームの次のターゲットはクライマックスシリーズ進出ということになるが、
これが熱い。
セは広島とDeNAの進出が決まったが、まだ2位がどちらになるかわからない。

そしてより熱いのがパ・リーグである。
10月1日の試合終了時点で、
2位のソフトバンクから3位楽天、4位ロッテまでが、0.5ゲーム差内にひしめき合っている。
どのチームにも2位に入って本拠地でクライマックスを戦える可能性があり、
どのチームにも4位になってBクラスとしてシーズンを終える可能性がある。
2位と3位では大違いだし、
3位と4位ではさらに大違いである。
選手、ファンはもちろん、球団経営の面からも大切な試合が続く。

パ・リーグは、場合によっては勝率が5割に達しないチームが3位になる可能性がある。
そのチームがクライマックスシリーズを勝ち抜いて、日本シリーズも勝ってしまえば、
ペナントレースで負け越したチームが日本一になってしまう。
なんだかヘンテコな話だが、
それは急に決まった話ではない。

ぶっちぎりで優勝したチームとしては、クライマックスで負けては洒落にならないから、
しゃかりきに勝ちに来るだろう。
だからこそ、熱く面白い試合が生まれる。
そして、真に強いチームなら、短期戦もきっちり勝ち抜くはずである。
プロ野球のお楽しみはこれからが佳境。
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