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映画評 「デイアンドナイト」 [映画評]

俳優の山田孝之さんがプロデュースし、脚本へも参加したことで話題の「デイアンドナイト」。
実に重い映画であった。

タイトルの「デイアンドナイト」は、
昼と夜が別の顔を持つことを意味するとともに、
明と暗、
善と悪を象徴してもいる。

主人公は、自殺した父の無念を晴らそうとする。
父は絶対的な善のように映る。
しかし、父のしようとしたことが、家族を含めて周りの幸せにつながったかというと、必ずしもそうは言えない。
その父に世話になったという男が、主人公を助ける。
男は児童養護施設を営み、子どもたちを懸命に守るが、その資金を集めるためには法に触れることも厭わない。
大企業の職員は、父の告発を握りつぶし、結果的に自殺に追いやったが、悪意を持っての行動というより、組織としてはありうる行動に見えなくもない。

主人公の中の善悪も揺れ動き、
主人公を助ける男にも取り返しのつかない過去がある。
二人は、無垢な少女を救おうとするが、それも十分には叶わない。

観終わって、スカッとする映画ではない。
また、失礼ながら、よくできた映画でもない。
しかし、撮られるべき映画を観たという心地よさがある。
映画が好きで、
映画に自らの存在意義を見出している人たちが、
魂込めて作っていることが伝わってくる。

何か所か、撮影の苦労がしのばれるシーンがある。
派手なスタントが必要な場面ではなく、地味で、暗く、寒く、きつそうである。
誰がどう見てもやりたくない。
しかし、この映画を作る人たちは、それを避けることはできなかったのだろう。
いい意味での馬鹿であり、
いい意味での馬鹿を見ることは気持ちがいい。

主人公を演じるのは、この映画の企画も務めた阿部進之介さん。
これから注目すべき映画人である。
主人公を助ける謎の存在を、安藤政信さんが演じる。
ミステリアスかつどこか悲しさを漂わせる役どころを好演されている。
安藤さんと言えば、なんと言っても「キッズ・リターン」を思い出す。
私にとっても、大切な大切な映画である。
少女役に清原果耶さん。
私の愛する「ちはやふる -結び-」での演技が印象深いが、いろいろな映画に出て、着々とキャリアを築いておられる。

「デイアンドナイト」は、重く響く映画。
作りたい映画が作られたことが伝わってくる。
「ちゃんとした映画がないなあ」とお嘆きの貴兄は是非。

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