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映画評 「翔んで埼玉」 [映画評]

他県はどうだか知らないが、埼玉県内は公開前から「翔んで埼玉」で大盛り上がりであった。
新聞の地域欄には連日デカデカと映画の内容を紹介する記事が載り、
知事のところに出演陣が挨拶に行ったと言っては話題になり、
埼玉愛が見直されたり、
なんだりかんだりで。
というわけで、映画のマーケティングは大成功といっていいと思う。
「埼玉だけで大丈夫か?」
という意見もあるだろうが、埼玉県の人口は700万人を超えていて、ブルガリア一国に匹敵する。
デンマークやフィンランドやシンガポールを超えているのだから、市場規模としてなかなかのものがある。
それに、埼玉県でこれだけ話題になれば、他地域に波及するのも必至であろう。

個人的には、地方いじりはあまり好きな方ではない。
どこが田舎だとか、どこが不便だとか、いまだに漫才のネタになったりするが、芸になっていればともかく、田舎さ加減をいじるだけではあまり面白いとは思えない。
しかし、「翔んで埼玉」の予告編にはやられた。
これだけ突き抜けてしまえば、もう楽しんでしまうしかない。
2019年の予告編of the yearに最も近い位置にいると思う(んなものがあればだが)。

映画は、快調にスタート。
すんなり入れて、グイグイ引き込まれる。
前半がタルい映画が少なくない中、武内英樹監督の演出が冴える。
武内監督は、「のだめカンタービレ」「テルマエ・ロマエ」「今夜、ロマンス劇場で」と連続してヒットを飛ばしており、客の捕まえ方をよくご存じである。
予告編をなぞったような展開で、意外性は全くないのだが、一つ一つ大袈裟な演出がされていて、わかっていても笑える。
現在進行中の物語ではなく、都市伝説であるという設定もはまっている。
中盤も順調。
さすがに最後の方はちょっとしんどくなってくるが、それでも十分に楽しめる。
娯楽作品として、しっかり水準を超えている。

映画を引っ張るGACKTさんと二階堂ふみさんは、振り切った演技で世界観をしっかり表現されている。
高校生設定の役を40歳過ぎているGACKTさんがてらいなく演じられ、
男役を二階堂さんがあまり男らしくもなく演じられている。
それだけで、なんだかおかしい。
GACKTのライバルとなる伊勢谷友介さんがいい。
派手な顔立ちで、画面の中にいるだけで非日常になる。

しっかり楽しんだのでもうそれでいいのだが、あえて言えば、映画の奇跡は生まれなかった。
出オチ的な面白さがピークであり、それが増幅していくことはなかった。
また、コメディで言えば去年の「カメラを止めるな!」であったり、おととしの「帝一の國」であったり、
学園ものであれば「桐島、部活やめるってよ」であったり、「ピンポン」であったり、
そうした映画で生まれた、人の手を離れてしまったような面白さにはならなかった。
楽しいが、それはある一定の範囲内であった。
もちろん、そこまで求めるのは酷だし、そういう映画ではないと承知してはいるが。

「翔んで埼玉」は愉快な映画。
学生はもちろん、大人も楽しめる。
仕掛けも派手で、映画としての満足度は高い。
過度な期待をしなければ、素敵な2時間が過ごせる映画である。

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