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「内部留保を吐き出せ」と言っていた方々は、今何思う [診断士的経済アプローチ]

実感できない、とさんざん言われてきたが、ここ数年は景気がよかった。
実感できないのに景気がいいとはなんだ、となるが、経済指標的には上向きだったということである。
すべての人に恩恵が及んだかどうかはさておき。

この期間、大企業を中心に利益が積み上がった。
企業は、配当や自社株買いにも回したが、利益剰余金として残る部分も少なくなかった。
2018年度の法人企業統計によれば、
「利益剰余金」が前年度比3.7%増の463兆円となり、7年連続で過去最高を更新したのだという。
利益剰余金は「内部留保」とほぼ同義でとらえられることも多いことから、
「内部留保が過去最高」
と報じるメディアも少なくなかった。

この状況を見て、
「内部留保が積み上がるのはけしからん。これを吐き出させよう」
と主張される政治家の方が増えた。
法人税増税を訴えられたり、
内部留保自体に課税することを主張されたり、
なにやら内部留保を目の敵にされているようですらあった。

企業としてみれば、
一生懸命に事業活動を行い、
なんとか利益を出し、
そこから税金を払い、
その残りが利益剰余金となるのに、
それを巻き上げられるのはあんまりだ、という気持ちだったのではないだろうか。
また、企業が内部留保を持つのは、
環境の変化に対応するため、
という経営判断をもとにしているのであり、
それを悪いことのように言われるのは心外だっただろう。

現在、世界はかつてない危機のただなかにいる。
需要が消失してしまったような業態もあり、
日々の資金繰りに苦慮している事業者も少なくないだろう。
こうした環境の激変に備えるのが内部留保である。
「そんなに貯めこんでどうする」
と散々批判されてきた内部留保は、こうしたときにこそ活かされる。

今の状況を見て、内部留保を吐き出させと主張されていた方々はどうお考えだろう。
「コロナショックは特別な状況であり、これを見込むのは神様でなければ無理」
などと開き直られるのだろうか?
内部留保は、予見できない危機に備える意味があり、予見できないことだから仕方がないでは済まないのだが。
ひょっとしたら、内部留保を目の敵にされていた方は、今の状況を見てもなんとも思っておられない可能性もある。
たぶん、そうだろう。
政治家や評論家には、「忘れる能力」が必要であるとも思うが、しっかり反省しないと次に活きてこない。
実施されなかったのだからいいじゃないか、ではなく、自分たちの主張を実体経済に合わせて、随時振り返っていただきたい。
そして、反省すべきは反省して、次につなげていただきたい。

もし、内部留保を減らす政策が間違っていないとお考えであれば、引き続き堂々と訴えていただきたい。
今のような状況でこそ、堂々と訴えていただきたい。

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