SSブログ

今さらながら「リーマン・ショック」という表現は止めにしたい  ~ リーマンの破綻はきっかけではなく結果 ~ [経済を眺める楽しみ]

2008年9月15日に、アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズが経営破綻した。
今年は、それからちょうど10年に当たる。
節目の年に、いろいろな特番も組まれていた。

もうすっかり定着した言葉なので、今さら口をはさんでも仕方がないが、「リーマン・ショック」という言葉が嫌いだ。
何故嫌いかというと、あの当時の金融危機が、リーマン・ブラザーズの倒産がきっかけで起こったように勘違いされてしまいそうだからである。

金融危機の引き金となったのは、「サブプライム住宅ローン危機」であり、これは2007年には明らかになっていた。
初めは、影響は限定的かと思われていたが、次第に世界経済全体を揺るがす事態に発展していった。
2007年にはBNPパリバをめぐる騒動があり、メリルリンチも危機に陥った。
2008年にはベア・スターンズが危うくなり、アメリカのフレディマックとファニーメイといった住宅関係の金融機関の救済の是非が連日取りざたされていた。
リーマン・ブラザーズの倒産は、そうした流れの中で生まれたものである。
リーマン・ブラザーズの倒産が、金融危機の引き金を引いたのではない。

そもそも、リーマン・ショックという言葉自体、日本にしかないという。
Wikipediaによれば、「the financial crisis of 2007–2008(2007年から2008年の金融恐慌)」とか、「the Global Financial Crisis(国際金融危機)」などというのが一般的であるそうだ。
一金融機関の暴走によって金融危機が引き起こされたような誤解を与える表現は止めた方がいいように思う。

金融危機を振り返る映像には、必ずといっていいほど、倒産したリーマン・ブラザーズの社屋から会社の看板を掲げて現れた社員の姿が映し出される。
見るたびに「なんだかなあ」と思う。
ごく一部の強欲な人たちが起こした危機ではなかったところが、本当の怖さなのに。

nice!(3)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事