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映画評 「コーヒーが冷めないうちに」 [映画評]

「4回泣けます」がキャッチコピーとなっている「コーヒーが冷めないうちに」。
いろいろ考えた末に付けられたコピーなのだろうとは思うけれど、観に行った私が言うのもなんだが、これを読んでも観に行きたくなる感じはしない。
4回とわざわざ書くくらいだから、数多く泣けることがいい映画だということなのだろうか。
一度だけ、深く泣かせる映画もいいものだと思うが。
そもそも、泣かせなくてもいい映画もいくらでもあるし。

そんなことをいきなりグダグダ書いてしまったのも、いかにも泣かせようとする映画に思えたから。
泣かせることがノルマのようになってしまっては、観る方はしんどい。

この映画の脚本は、奥寺佐渡子さん。
私の愛する細田守監督作品の「時をかける少女」「サマーウォーズ」を書いた人。
実写でも「学校の怪談」「八日目の蝉」をものにされている。
しかし、今作はもう一歩だったと思う。
もちろん映画の責任は、監督にあるが。

映画の舞台は、とある喫茶店。
決まった席に座ってコーヒーを飲み、強く念ずると過去に戻れるが、
「過去に戻れるのはコーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまう間だけ」
「過去に戻って何をしても、起こってしまったことは変えられない」
「その喫茶店に来たことがある人にしか会うことはできない」
などの制約がある。
まあ、別になんでもいいけれど。

主演は、有村架純さん。
ほぼ出ずっぱりなので、彼女のファンにとってはいい映画だろう。
石田ゆり子さんもずっとおられる感じなので、石田さんのファンにも喜ばれそう。

いろいろな人が過去に戻るので、映画というより、連ドラにした方が楽しめる題材かもしれない。
監督の塚原あゆ子さんは、ドラマの演出に定評のある方のようだが、本作では映画的な奇跡にはたどり着けなかったように思える。

「コーヒーが冷めないうちに」は、設定の素っ頓狂さによって成り立つ物語。
映画の世界ではこうした設定もありだが、設定が素っ頓狂な割には、登場人物はありそうな行動ばかり。
ワクワクする感じは最後まで持てなかった。
長く寄り添った夫婦や親子連れなどで観に行けば、感慨が生まれないとも限らないが。

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