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書評 「MMTとは何か」 [読書記録]

MMTとは、日本語で「現代貨幣理論」のこと。
MMTという名称は、
「Modern Monetary Theory」もしくは「Modern Money Theory」の頭文字をとったものである。

2019年ごろから世界に広がり始めた考え方であり、
少なからぬ経済学者がその妥当性を認めている。
だから、必ずしも「トンデモ」な理論ではない。
MMTというと、
「政府はどんだけ借金しても大丈夫」
という理論とくくられることが多い。
そこだけ聞くと、「んな美味しい話はないよ」となるが、
この本を読むときちんとした体系を持った主張だとわかる。

著者は、株式会社クレディ・セゾンの主席研究員の島倉原さん。
積極財政を訴える論客で、
MMTにも造詣が深い。

この本は、「そもそも貨幣とは何か」という問いかけから始まっている。
哲学的に問うているわけではなく、
経済学の初歩をやり直すわけでもなく、
貨幣の理解がMMTの肝だからであろう。
いわゆる主流派経済学とは、貨幣のとらえ方からして違うのである。

また、さんざん赤字国債を発行しながらインフレにならない日本を指して、
「MMTの理論が正しいことが証明されている」
と言われることがあるが、この本ではそうした立場はとっていない。
むしろ、
日本ははからずもMMT理論の一端が実証されているが、実践にはほど遠い、
という立場である。
MMT理論に根差した財政政策を行えば、ずっといい経済状況になっていると考えているのである。

この本は300ページ近いものだが、新書であり、MMTのすべてを言い尽くしてはいない。
私の力不足もあり、全容の理解には及んでいないものと思う。
とにかく強く感じるのは、今までの経済学の常識と違うからと言って、
頭から否定すべきではないということである。
新しい理論というのは、いつも異端として始まる。
MMTについても、ありえない、と思考停止せずにしっかり向き合うべきだと思う。

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