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映画評 「男はつらいよ お帰り 寅さん」 [映画評]

この映画を正面から批評するべきなのだろうか。
それとも、独立した世に問う作品ではなく、ある種のおまけのようにとらえるべきなのだろうか。
そんなことを思わせている時点で、いい映画であるわけはないが。

私の感想としては、
総集編、特典映像、
のようにとらえるなら、こういう映画もありかな、と思う。
しかし、まともな一本として、「男はつらいよ」のシリーズとして観るなら、
「そりゃ、ないよ」
という作品だと思う。
いろいろな技術を使って寅さんが帰ってくるのか、
若しくは寅さんが帰ってこなくても作品としての「男はつらいよ」は帰ってくるのか、
などと、今から思えば途方もない高望みをしていた反動もあり、
失望感は募った。
はじめから、「男はつらいよ」ファンへのほんのちょっとしたサービス、くらいに思っていればよかった。
それでも、がっかりはしただろうが。

登場人物に人間的な魅力がないのが致命的である。
今作は、車さんのおいの満男とその初恋の人イズミちゃんのお話が中心だが、
二人とも美しくない。(容姿ではなく、人物として)
しかも、満男を演じる吉岡秀隆さんとイズミちゃんを演じる後藤久美子さんのお二人の演技が、
どうにもしっくりこない。
OKが出ているので、監督さん的にはこれでいいのだろうが、
私は最後まで違和感しか覚えなかった。

寅さんというと、周りも個性派揃いで、丁々発止やり合うのが魅力の一つなのだが、
今作ではみなすっかり疲れている。
唯一美保純さん演じるお隣さんだけがピーヒャー言うのだが、すぐに排除されて終わり。
映画を通して、「もうだめだ」という空気が伝わってくるのが切なかった。
これでは「男はつらいよ」というより、
「見せられるこちらがつらいよ」
という感じである。
なんだか、本当につらくなった。

いいところを挙げるとすると、過去の映画の名シーンが見られること。
マドンナとして登場された女優さんはみな美しいし、
ほんのワンショットでもなんだか心が動く。
メロンを取り合うシーンでは笑わされた。

「男はつらいよ お帰り 寅さん」は、なんとも寂しい映画。
映画は夢を売るものだと思うが、
この映画は撮る人演じる人が皆老いてしまった現実を見せつける。
それも意図的にではなく、結果的に。
作るべきだったのだろうか。

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