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映画評 「酔うと化け物になる父がつらい」 [映画評]

緊急事態宣言が明けて、映画館も開き出した。
しかし、映画ファンの「待ちに待った」という気持ちと裏腹に、
映画会社はそれに応える映画を公開してはいない。
今、大作や話題作を公開しても、どうせ客は入らないから、
ということなのだろうが、ファンとしてはなんとも寂しい限りである。

最寄りの映画館でも、「待望の新作」的なものは上映されず、
今年の1月頃に公開されたものとアベンジャーズ系。
正直なところ、消去法で観る映画を探すような塩梅である。
映画会社の事情も理解できるが、3月ぶりの鑑賞にも関わらず胸が高鳴らないのは残念。

本作「酔うと化け物になる父がつらい」は、
アルコール依存症の父とその家族を描いたコミックエッセイの映画化。
主演は、こうした小品に引っ張りだこの松本穂香さん。
どうしようもない父親役に、このところさらに存在感を高めている渋川清彦さん。
共演に、ともさかりえさん、今泉佑唯さん、恒松祐里さんなど。

あまり期待していなかったのだが、
実際、その範囲内の映画だった。
久しぶりに映画を観て、ガツンと来る作品ならよかったのだが、まあ仕方がない。

父は、いつも飲んだくれているのだが、そんなに化け物でもない。
なんだか不思議なたたずまいの母の苦悩は十分に伝わらない。
主演の女の子の内面が漫画のふき出しのように文字で書かれるのだが、その演出は興ざめ。
いい話系的に結ぼうとするのも、なんだかなあ、という感じ。
つまりは、刺さるものがなかった。

脚本は、とクレジットを見ると、久馬歩さん。
んな人知らんわ、という方も少なくないとは思うが、お笑いユニットザ・プラン9のリーダーであり、
私にとってより重要なのは映画「Bの戦場」の脚本担当でもあるということ。
「Bの戦場」は2019年に輝く珠玉の作品であり、脚本の功績も大きいと思っていた。
しかし、本作は・・・。
事前に久馬さんの脚本と知っていたら妙に期待感を高めていただろうから、
知らずに観に行ったのは不幸中の幸いだった。

俳優陣の演技に不満はなく、特に渋川清彦さんはいろいろな表情で駄目なおやじをしっかり演じられていた。
本作の場合、演出と脚本に問題があり過ぎた。

「酔うと化け物になる父がつらい」は、なんとも宙ぶらりんな作品。
シリアスにも、コミカルにも、お涙にも寄せ切れず、
もやもやしたままに時が過ぎていった。
いい意味でのサプライズはなかった。

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