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2019年の「伝えたい映画」 ~ 「伝えたい映画大賞」を選んだ ~ [映画評]

毎年トンチンカンなノミネートが多いので、コアな映画ファンはもともと視野に入れていないと思うが、
今回の日本アカデミー賞には例年以上に首を傾げさせられた。
気にしなければいい、と言われればそれまでだが、
いい映画をきちんと評価して、
作り手に報いたい、
見損なった人に伝えたい、
後世に残したい、
と真面目に考えると、あまりにも残念だった。
さらに言えば、他の映画賞もどうにも的が外れているように思えた。

そこで、だったら自分たちで「伝えたい映画大賞」なるものを決めたらどうかと、映画好きの間で盛り上がった。
いろいろな人を巻き込んでイベント的にやりたい思いもあったのだが、
新型コロナが猛威を振るい、2020年の半ばまで来てしまった。
機を逸した感はなくはないが、せっかくなので議論してみた。
やっぱり楽しかった。

まずは俳優部門。
男優賞は、池松壮亮くん。
「宮本から君へ」の演技が圧巻。
私の好きな映画「We Are Little Zombies」にも出演していた。
池松くんにあげてしまうと、毎年池松くんになってしまうのではないかと心配になるくらいの存在である。
他では、「2019年は成田凌くんの年だったね」ということで一致した。
私は、「凪待ち」の吉澤健さんを推したが、ちょっと渋過ぎたかしら。

女優賞は、和田光沙さん。
主演された「岬の兄妹」が強烈。
難しい役を、とてつもない熱量と容赦のないリアリティで演じられた。
私は、「Bの戦場」のよしこさんを推したが、演技と言う点に絞ると和田さんに軍配が上がるのも納得。
その他、岸井ゆきのさんの不思議な魅力に話題が集まったほか、MEGUMIさん、松岡茉優さんが話題に上った。

さて、作品賞。
候補として出されたのは、
「ひとよ」
「宮本から君へ」
「蜜蜂と遠雷」
「洗骨」
「Bの戦場」
「岬の兄妹」
「殺さない彼と死なない彼女」
「こんな夜更けにバナナかよ」
「愛がなんだ」
「We Are Little Zombies」
といった作品。

私は「Bの戦場」を強く推したのだが、上位3作に入るには一歩及ばず。
「蜜蜂と遠雷」の演出や俳優陣の頑張りも高く評価されたが、こちらもあと一息。

激論の末、選ばれたのは以下の3作品であった。
大賞「洗骨」    監督・照屋年之(ガレッジセールゴリ)
2位 「岬の兄妹」  監督・片山慎三
3位 「愛がなんだ」 監督・今泉力也

「洗骨」は、もっともっとヒットしてほしかった快作。
その意味でも、「伝えたい」という趣旨に合致する。
もともとは、短編映画『born、bone、墓音。』という作品。
公式HPによれば、
「12年に渡り短編映画や自主映画の制作で積み重ねてきた照屋監督のその短編を原案に、長編映画として新たに生まれたのが本作『洗骨』です。」
とのこと。
作り手の思いがたっぷり詰まった作品だった。
奥田瑛二さん、水崎綾女さん、大島蓉子さんといった面々の演技も実に印象深かった。

2位の「岬の兄妹」は超絶。
障害、貧困、という重いテーマに真正面から挑み、
何の救いもない展開にかかわらず、そこはかとなくユーモアが流れる。
傑作と呼ぶにふさわしい作品。
いつの時代に観ても、
世界の誰が観ても、
素晴らしいと思える作品。

3位の「愛がなんだ」は不思議な作品。
女性人気の高い映画で、選考でもそこが一つのポイントなった。
2019年、いろいろな映画で様々なタイプの役柄を演じ分けた旬な俳優・成田凌さんと、
なんともつかみどころのない岸井ゆきのさんの絡みが絶妙。
「愛ってなんだ」でも「愛とはなんだ」でも「愛なんだ」でもなく、
「愛がなんだ」な作品だった。

2020年は、残すところあと半分になってしまった。
映画の公開がすっかり滞っている。
厳しい状況だとは思うが、
今しか作れない、
今の人に伝えたい、
そんな作品を届けるのが映画人の使命だと思う。
いい作品を観て、
また来年、「伝えたい映画」を話し合いたい。

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