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映画評 「truth 〜姦しき弔いの果て〜」 [映画評]

本作は、映像職人、堤幸彦さんの監督作品50本目という記念すべき映画。
大作をいくつも手掛けてきた堤監督が、
区切りの作品にして初の自主制作。
撮影期間は2日間、
予算は700万円、
文化庁の支援金、
という異色作である

出演者は3人の女優のみ。
そのうちのお一人、広山詞葉さんが発起人となり、
役者仲間の福宮あやのさんと河野知美さんに「自分たちで映画を作ろう」と声を掛け、
堤監督に相談したところ、監督を引き受けてもらえたのだという。

広山さんは、
「本当にコロナで仕事が全くゼロになって、何もすることがなくなって。自分にとっての生きるとは何かを考えたとき、表現をしなければ自分にとって生きていると言えないなと思ったときに、文化庁の助成金を見つけまして」
と話しておられる。
コロナ禍、こういう映画作りのストーリーには心動かされる。

しかし、それと作品の評価は別物。

三人の女優さんによる演技合戦は見応えがある。
あっち行ったりこっち行ったりの激しい会話劇なのだが、
お芝居の力で引き付ける。

ただし、心の奥までグイグイ来るかというと、それには至らない。
コメディであるのであまり細かく突き詰めるのは野暮だが、
設定はわかりやすく陳腐。
三人は一人の男に翻弄されていたのだが、
リアリティはなく、共感するには至らない。
かといって、爆笑できることもなく。

密室劇で、
お芝居を観ている感覚だが、
これは映画。
で、映画として観たときに満足度が高いかというと、それはなんとも。
懸命に演じられた役者の皆さんのお気持ちは受け取るが、
観終わったときの満腹感は希薄。
え、これで終わり、
という感じ。
小さな小屋で演劇として観られたら別の印象なのだろうけれど。

「truth 〜姦しき弔いの果て〜」は、作られた方の気概が伝わる作品。
その点は嬉しいが、
その点を割り引くと、さて。

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株価の大幅下落をどう見るか [経済を眺める楽しみ]

19日の東京株式市場で日経平均は大幅続落。
前日比790円安の27,467円となり、前年10月以来の水準まで下げた。

値下がり銘柄は全体の97%に達するという文字通りの全面安。
このセクターはいい、
この銘柄は好調、
といった選別さえもされない状況だった。

特に下げが急だったのはソニー。
ソニーの業績は好調。
2022年3月期の連結営業利益予想を上方修正し、
2期連続の過去最高益、初の営業利益1兆円の大台乗せの見通しを公表している。
そのソニーの株価が急落。
前日比1,820円安、
率にしてマイナス12.8%の暴落である。
個別の理由としては、
マイクロソフトがゲーム会社を買収することによりソニーのロイヤルティー収入が落ち込むのではないかとの予測がなされたこと、
とされているが、それにしても二ケタの下落は驚きである。

トヨタも5%の下落。
東京エレクトロンも6%の下落、
その他の優良企業も軒並み下げた。
証券ストラテジストからは、政権の経済政策について、
「オミクロン株よりも日本株に強い危機感を持つべき」
という声も聞かれているという。

さて、この急落をどう見るか。
大変だ、まだまだ下がるぞ、
と身構えるのか、
いい買い場が来た、
と受け取るのか。

日本株の急落はアメリカ株に引きずられている面が強いが、
感染者の急増も、
アメリカ金利の高騰も、
ある程度予測されていたものであり、
とんでもないネガティブサプライズが飛び込んできたわけではない。
インフレの拡大や成長の鈍化もあり、株価の多少の調整は避けられないにしても、
底割れにつながるものではないと思う。
のだが、さてどうだろう。

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気にしている人は少ないかもしれないが ~ 日本アカデミー賞のノミネート発表 ~ [映画評]

今年のアカデミー賞には、例年以上の注目が集まる。
なぜなら、各種映画賞で高い評価を受けている「ドライブ・マイ・カー」が、日本映画として初の作品賞を獲得する可能性が取りざたされているからである。
もしそうなったら、きっと大騒ぎになるだろう。

そちらは、本家アカデミー賞の話。
日本アカデミー賞も45回目というからかなりの回数を重ねてきた。
しかし、イマイチ価値が高まってこない。
理由は様々あるだろうが、選考に説得力がないというのも大きな要素の一つだろう。
発表された今年のノミネートは以下のとおり。

◆優秀作品賞
「キネマの神様」(山田洋次監督)
「孤狼の血 LEVEL2」(白石和彌監督)
「すばらしき世界」(西川美和監督)
「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)
「護られなかった者たちへ」(瀬々敬久監督)

◆優秀監督賞
白石和彌(孤狼の血 LEVEL2)
瀬々敬久(護られなかった者たちへ)
成島出(いのちの停車場)
西川美和(すばらしき世界)
濱口竜介(ドライブ・マイ・カー)

◆優秀主演男優賞
佐藤健(護られなかった者たちへ)
菅田将暉(花束みたいな恋をした)
西島秀俊(ドライブ・マイ・カー)
松坂桃李(孤狼の血 LEVEL2)
役所広司(すばらしき世界)

◆優秀主演女優賞
天海祐希(老後の資金がありません!)
有村架純(花束みたいな恋をした)
永野芽郁(そして、バトンは渡された)
松岡茉優(騙し絵の牙)
吉永小百合(いのちの停車場)

◆優秀助演男優賞
阿部寛(護られなかった者たちへ)
鈴木亮平(孤狼の血 LEVEL2)
堤真一(ザ・ファブル 殺さない殺し屋)
仲野太賀(すばらしき世界)
村上虹郎(孤狼の血 LEVEL2)

◆優秀助演女優賞
石原さとみ(そして、バトンは渡された)
清原果耶(護られなかった者たちへ)
草笛光子(老後の資金がありません!)
西野七瀬(孤狼の血 LEVEL2)
広瀬すず(いのちの停車場)

◆優秀アニメーション作品賞
「アイの歌声を聴かせて」(吉浦康裕監督)
「漁港の肉子ちゃん」(渡辺歩監督)
「劇場版 呪術廻戦0」(朴性厚監督)
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(庵野秀明総監督)
「竜とそばかすの姫」(細田守監督)

「孤狼の血 LEVEL2」「護られなかった者たちへ」「ドライブ・マイ・カー」
の3作品が高く評価されたらしく、数多くの部門でノミネートされている。
「孤狼の血」は緊張感の高い作品だったが、1作目を超えたかというとそれはどうか。
「護られなかった者たちへ」への高評価は、「新聞記者」や「Fukushima 50」といった社会派を好む日本アカデミー賞らしい。
「ドライブ・マイ・カー」には、異論ありません。

作品賞に山田洋次監督の「キネマの神様」が、
監督賞に「いのちの停車場」の成島出監督がそれぞれノミネートされているが、
このあたりの選考も今一つピンと来ない。
大御所の作品であっても、しっかり見極めてほしい。

アニメ部門では、「映画大好きポンポさん」が漏れたのが残念。
作風から仕方ない気もするが、選ばれた他の作品と比べると納得感は薄い。

日本アカデミー賞が日本映画の最高峰として、すべての映画人が目標とする存在になればいいと思う。
現状、映画会社の都合とか、ネームバリューとかに左右されているように見られているのは残念である。
目標となる存在となるためには、いい選考がなされることが大前提となる。
今年で言えば、作品賞部門に、
「JUNK HEAD」とか「ベイビーわるきゅーれ」とか
「映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」
とかが入ってくれば、変わって来たな、という感も出たのだが。

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もちろんドカベンを読んでいた [ヨモヤ]

漫画家の水島新司さんがお亡くなりになった。
82歳。

水島さんと言えば野球漫画。
有名な作品だけでも、
「あぶさん」
「一球さん」
「男どアホウ甲子園」
「球道くん」
「大甲子園」
「ドカベン」
「光の小次郎」
「野球狂の詩」
とどしどし挙げられる。

個人的には「一球さん」の最終巻が好きだったりするし、
人気のない頃のパ・リーグを取り上げてくださった「あぶさん」に恩義を感じたりもするが、
代名詞的な知名度を誇るのはなんといっても「ドカベン」であろう。

明訓四天王と呼ばれた
山田太郎、岩鬼正美、殿馬一人、里中智のほか、
ライバルとして描かれていた、
不知火、雲竜、土門、
影丸、フォアマン、賀間、犬飼、坂田、武蔵坊、義経などなど、
今でも名前とプレーぶりを思い出すことができる。

岩鬼の悪球打ちも魅力的だったが、
多くの野球少年が真似をしたのは、殿馬の秘打の数々。
「白鳥の湖」「花のワルツ」「G線上のアリア」といった奇天烈な打法をコピーしようとしたものだった。

水島さんの野球漫画の魅力は、
漫画らしい奇想天外さと、
豊富な知識に裏付けられた綿密な描写が共存しているところだった。
そして、にじみ出る野球愛が読者をひきつけた。

水島漫画に出会えて楽しかった。
ありがとうございました。

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36年連続重賞V 武豊騎手の伝説は続く [ヨモヤ]

15日に中京競馬場で行われた愛知杯で、単勝7番人気の伏兵、ルビーカサブランカが勝利を飾った。
鞍上は、生けるレジェンド武豊騎手。
この勝利で武豊騎手は、デビューした1987年から36年連続の重賞制覇となった。

重賞競走は年間に100以上あるので、年に1つや2つ勝つのは簡単なように思えるが、
騎手自体が130人くらいいることもあり、
年間に1つも勝てない騎手が大半である。
36年間欠かさずに重賞を勝ち続けているというのは、驚異的と言っていい。
もちろん、追随する存在はない。

現在、武豊騎手は52歳。
若い時期から天才と謳われてきたが、
ここまで順風満帆で来たわけではない。
特に2010年~12年の頃は、落馬による大けがもあり、勝利数が伸びなかった。
干されている、と噂されることもあった。
それだけに、2013年にキズナでダービーを勝ったときのインタビューで、
「僕は帰ってきました!」
と語ったのにはグッときた。
(レース自体も、ダービー史上に残る美しいものだった。)

近年の武豊騎手は、一時のように、
年間200勝以上を勝つわけではないし、
GⅠを根こそぎ持って行くわけでもない。
しかし、今でもトップジョッキーであり続けている。
50歳過ぎてトップで居続けているスーパーアスリートである。

歴代最高の騎手は誰か、との議論になれば、
福永洋一さんの名前を挙げる方が少なくないだろう。
ほかにも、岡部幸雄さん、野平祐二さんなどを推される方もおられると思う。
答えは出ないテーマだが、
武豊騎手が残してきた数字はなによりも説得力がある。
さらに、
競馬ブームの立役者となり、
ディープインパクト、サイレンススズカ、オグリキャップなどのスターホースにまたがっていたという戦歴も強烈である。

手に入れられる称号はすべて手に入れてきたかに見える武豊騎手だが、
ファンが期待しているのは、GⅠ競走のコンプリート。
現在JRAには24のGⅠ競走があるが、
武豊騎手がまだ勝っていないのは2017年に昇格したホープフルステークスのみ。
これに勝ってGⅠ完全制覇という前人未到の記録をファンは楽しみにしている。
ホープフルステークスは、その年最後のGⅠ競走。
最後の最後まで楽しみを持続させる、武豊騎手はまさにスーパースターである。
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テーマソングを探している [ヨモヤ]

1998年頃、NHKで『アリーmyラブ』という海外ドラマが放送されていた。
法律事務所を舞台とした、愛あり、笑いあり、法曹劇ありのコメディで、
私の人生で唯一、毎週欠かさず観た海外ドラマである。

劇中、主人公のアリーが、カウンセラーから
「テーマソングを持つように」
とのアドバイスを受けるシーンがある。
いつでも気分を上げられる曲を持っていれば沈みそうなときでもなんとかなる、
というのである。

それ以来、私も自分のテーマソングを探し続けている。
しかし、好きな曲、というのはいくらでもあるが、
自分のテーマソング、となるとなかなか決めきれない。

デビュー当初から共に時代を過ごしているのはサザンオールスターズだが、
一曲に絞り、テーマソングとなると、なかなか。
「女呼んでブギ」というわけにもいくまいし。

好きなバンド、歌い手というところでは、
フリッパーズギターか小沢くんの曲でなにかいいのを、と考えるのだが、
これと決めきれていない。

応援歌、という意味では、
中島みゆきさんの「ファイト!」を思いつくが、さすがに暗い。
ウルフルズの「ガッツだぜ!!」という柄でもないし。

洋楽ではどうか。
オアシスの「Some Might Say」という曲が好きなのだが、これは家族に進呈してしまった。
オアシスにはほかにも好きな曲がたくさんあるが、家族で2人もオアシスっていうのもちょっと。

ビートルズも一曲に絞るのが難しい。
能天気な「Ob-La-Di, Ob-La-Da」が候補かなとは思うけれど。

親愛なるプリンス殿下の曲の中では「Let‘s Go Crazy」だろうか。
殿下はどちらかというとアルバムで楽しむタイプだったから悩んでしまう。

洋楽のなかで好きな曲、という点では、
あまり知られていないかもしれないが、
ブロウモンキーズというグループの「Diggin′ Your Scene」という曲がお気に入りなのだが、
内容的にテーマソングには合わないかもしれない。
好きであり、かつ自分に合っている曲となると、
レイディオヘッドの「Creep」なのだが、
50過ぎたおっさんがこの曲だと、リアルに気持ちが悪い気もする。

テーマソングとしては、
いい曲であることを大前提として、
歌われている内容に共感出来て、
聴くと無条件に元気になれる、
というのがいい。
もうしばらくテーマソング探しの旅は続きそうである。
でも、もうそろそろ見つけたい。

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2021年の邦画を振り返る ~ その2 困った映画たち ~ [映画評]

2021年もそれなりの数の邦画を観た。
映画業界が厳しい時期にあって、観ることで支えたいという気持ちもあった。

といって、公開されるすべての邦画を観ることはとてもできない。
だから、ある程度選んでいくのだが、ハズレの確率は小さくない。
つまらないときには素直につまらない、と書くようにしているが、
嬉々として書いているのではなく、
面白いだろうと期待して観に行って、
面白くなくてがっかりしているのだということはご理解いただきたい。
当たり前だが、腐すために観に行っているのではない。

困った映画を振り返ろうとしたとき、まず浮かんだのがドラマの映画化。
2021年も多くのテレビドラマが映画化されたが、
ほぼ百発百中で面白くなかった。
テレビ界隈の方が作る作品だから、という偏見無く見るように心がけているが、
どれだけ甘めに観ようと思ってもそれを上回ってつまらない。
懲りもせず2022年もドラマの映画化作品を観に行くつもりだが、
2021年はタイトルに「劇場版」と付いたら、超高確率でトホホな出来栄えだった。

観終わった映画に100点満点で点数を付けるようにしていて、
最低点ではなかったが、失望度ではナンバーワンだったのが、
「CUBE 一度入ったら、最後」。
海外の傑作映画をわざわざすさまじく劣化してリメイクすることはないだろうに。
なんでこんなの作っちゃったんだ、という衝撃は強烈。

トンデモ映画という点で忘れられないのは、
土屋太鳳さん主演の「哀愁しんでれら」。
面白くないうえにぶっ飛んだ内容で、手の付けようがない作品なのだが、
今思うと凡百の単につまらないだけの映画よりはましなような・・・。

ちまたの評判が悪い作品は観てみるとそこまで悪くなかったりするのだが、
評判どおりオイオイだったのは、
「100日間生きたワニ」。
監督は「カメラを止めるな!」の上田慎一郎さんで、大きな汚点を残された。
まあ、ドンマイです。
63分という短い上映時間に救われた。

興行成績は上々で、作品としても一定の評価を獲たものの、
個人的にはまったくしっくり来なかったのが、
「竜とそばかすの姫」。
細田監督への期待値が高過ぎるという面はあるかもしれないが、それを差し引いても・・・。
しかし、海外の映画賞ではかなり評価されているようだ。
ふうむ。

監督で観に行ってがっかりのパターンでは、
「ずっと独身でいるつもり?」がドンピシャ。
この映画を撮ったふくだももこさんの前作「君が世界のはじまり」が大好きで、
本作も期待して観に行ったのだが、あれまあ。

感傷的な気持ちに浸らせられたのは
「銀魂 THE FINAL」。
アニメの銀魂が大好きで、長い間楽しませていただいた。
ドキドキワクワクさせ続けてくれた作品の最終章としては哀しかった。
いつまでも続くものはどこにもないとわかっているものの、
いろいろあったけれど最後は凄かった、と言えるような映画を作って欲しかった。

2021年は、困った映画が多かった気がする。
それも思い切ってバットを振った結果で外れてしまったというより、
置きに行ってつまらないという残念な展開。
2022年は魂の籠った作品に多く出会えますように。

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映画評 「決戦は日曜日」 [映画評]

本作は、選挙をめぐるコメディ。
テーマは社会派っぽいが、リアリティは重視されておらず、
メッセージを受け取るような作品ではない。
別にそれで全然いいのだが。

病気に倒れた父親の後を引き継ぎ、急遽出馬することになった娘役を宮沢りえさんが演じ、
彼女を支える議員秘書を窪田正孝さんが演じる。

宮沢さんは、とんだ勘違い女、といった役回り。
回りの気持ちに全く気付かず、ひたすら暴走を繰り返される。
大義といったものがあるわけではないので、単に迷惑な存在。
窪田さん演じる秘書は、彼女に振り回される。
しかし、彼にも大きな使命感といったものがあるわけではない。
全くかみ合わない二人だったが、選挙や政治をめぐる理不尽さから、
いつしか同じ目的をもって行動し始める。
その転換の説得力はそれほどではないが、お二人の演技は楽しかった。

タイトルの「決戦は日曜日」は、おそらくドリカムの「決戦は金曜日」を文字ったものだろうが、
日曜日は投票日のことを指す。
本来、一票でも余分に獲得するために奔走するのだが、
この映画ではなるべく落ちるように努力する。
そのドタバタが喜劇となっている。

笑えたかというと、正直、笑えはしなかった。
少しも面白くなかったかと言えばそんなことはないが、声を出して笑うほどではない。
私以外のお客さんからも、笑い声が次々上がるということはなかった。
笑わずとも楽しんでおられた可能性はあるが。

コメディなので、とにかくわかりやすく大げさにしたいという気持ちはわかるが、
「大げさに見せているなあ」
という事情ばかりが伝わり、こちらの気持ちがついていかない。
俳優陣の演技は皆さん素敵だったのだが。
もう少しリアルに見せた方が、かえって面白みが増したのではないだろうか。

「決戦は日曜日」は、シニカルなコメディ。
もうひとひねり、ふたひねりあればもっと楽しく観られた気がする。
俳優陣の演技が楽しかっただけに、惜しい。

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新聞の衰退に歯止めがかかるとしたら [ヨモヤ]

東洋経済オンラインに、
「昨年も180万部減、全然止まらぬ『新聞』衰退の末路」
との見出しの記事が掲載された。

記事によれば、
日本の新聞は、1990年代末の5,000万部超をピークに下降を続け、
本年中に一般紙が3,000万部台を割り込むことが確実なのだという。

これは人口減少が進む日本に特有の減少というわけではなく、
アメリカでも同様の事態が発生しているようだ。
なんでもアメリカでは、過去15年間で2,100の新聞が失われ、
2004年に新聞のあった少なくとも1,800の地域が2020年初めに新聞がない状態になるという。

なぜ世界中で新聞が苦しい立場に追い込まれているかというと、
言うまでもなくネットとの競合である。
とにかくネットは早い。
今起きたことが、すぐさま取り上げられる。
翌日の朝にならないと届かない新聞とは比べ物にならない。
しかも、多様な意見に触れることができる。
もちろん偏った意見も多いが、少なくとも一つの考え方だけではない。

さらに、タダである。

同じ紙媒体では、書籍・雑誌も窮地に追い込まれているが、
2021年は少し盛り返したとの報があった。
ネットとの競合を考えた場合、
新聞も書籍・雑誌もスピードでは圧倒的に劣るが、
深掘りという点で、書籍・雑誌には戦える余地がある。
新聞は深掘りの要素でもネットと対抗するのが難しい。

新聞が戦える要素は、権威や信頼度といった部分だろう。
ネットは玉石混交であり、もっともらしいことが書いてあっても、
なんの裏付けもないということが少なくない。
その点新聞は、いろいろなフィルターを通って表に出るだけに、
掲載されている記事には一定以上の社会的価値があると考えられる。
それを毎日届けているところに新聞社の力があり、
だから、わざわざコストをかけて読む意味が出てくる。

となれば、新聞は正確であり、密度が濃く、奥の深い情報を提供していくしか生き残るすべはないといことになる。
今の新聞がそうした期待に応えられているかどうかは、
部数を継続的に減らしていることがひとつの答えだと思う。

来年も再来年も新聞はあるだろう。
しかし、10年後はどうか。
20年後はどうか。
まだ絶滅が危惧されていない今のうちに、やれることはまだまだあると思う。

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映画評 「明け方の若者たち」 [映画評]

新年早々この映画を観たのは、
松本花奈さんという監督の作品だったから。
松本さんは、まだ23歳という若手。
女優として活動する一方で中学2年生より映像制作を始め、
学生時代にいろいろな映画祭での受賞歴があるという方。
慶應義塾大学総合政策学部に進まれたという経歴も興味をそそられる。

映画は、タイトルどおり若者たちの姿を描いたものであり、
若い監督さんならではの感性が活かされるのではないかと期待した。

恋愛が軸になっていて、
恋人二人のありようが「花束みたいな恋をした」とかなりダブる。
しかし、本作のテンポはだるい。
このだるさは演出意図によるものでもあり、
後半に明かされた秘密である程度納得させられるが、
それにしても。

繊細な二人のありようは現代の若者たちの空気感が伝わるといえば伝わるのだが、
その姿はありきたり。
映画として観るにはしんどい。
男にも女にも共感共鳴できる要素がほとんどなく、
感情移入できないままに時間を過ごすことになってしまった。

主演は、歌にドラマに映画に大忙しの北村匠海さん。
本作ははまり役ではあると思うが、あまり印象的ではなかった。
共演は、NHK朝ドラの主演が決まっている黒島結菜さん。
こちらも印象に残らず。
主人公の友人役を演じた井上祐貴さんがよかった。

「明け方の若者たち」は、なんとももどかしい作品。
若さゆえの悪あがきやもどかさ、じれったさ、だらしなさといったところが、
描かれていないということはないが、心に伝わってくるというとそこまでは。
置きに行く感じではなく、
もっと作り手のはちきれるような思いを届けてほしかった。
騒がしい映画を作ってほしかったというのではなく。

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