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書評 「自治体の”台所”事情 “財政が厳しい”ってどういうこと?」 [読書記録]

このところ、「福岡」への注目が一層高まっている。
昔から屋台や音楽などが有名であり、とんがった地方都市といった印象があったが、
今やそうしたレベルを超え、日本の成長をけん引する中心都市になっている。
「世界の住みやすい都市」
「成長可能性都市」
といったランキングもので上位に入り、人口増加率は全国でもトップクラス。
これを受け、
「福岡はすごい」
「福岡市が地方最強の都市になった理由」
といった本が出版され、
高島市長による「福岡市を経営する」という本も話題を呼んでいる。

プロ野球の王者ソフトバンクのイメージも相まって、福岡の印象は、
「自由」「豪快」「個性的」
といった言葉に象徴されるだろうか。
それはきっと、これからの自治体にとって必要な要素であるに違いない。

「“財政が厳しい”ってどういうこと?」を書かれた今村寛さんは、福岡市の職員。
市の枠をはるかに超え、全国的に活躍しておられる。
今村さんに限らず、職員に元気があるのも福岡市の特徴の一つかもしれない。
はっちゃけた職員を認める、許す、力づけるといった土壌があるのだろうか。
これも、これからの自治体にとって必要な要素であると思う。

本書は、今村さんが全国を飛び回って開催されている
「出張財政出前講座 with SIMふくおか2030」
の内容を本にしたもの。
この講座は、
「自治体にお金がないってホント?ホントだとしたらなぜ?」
「予算って誰が、どうやって決めているの?」
といった、知っているつもりでわかっていないことから、
「もし、自分が予算を作るとしたらどうする」
といった実践的な内容までを学べる場として、参加者を虜にし続けておられる。

初級者向けの講座なので、この本に書かれている多くのことについて、自治体の財政課の職員は知識としては知っていると思う。
しかし、知っているだけでは足らない。
財政課以外の職員や地域の方に、それをしっかり伝えて、理解してもらって、ではどうするかと考えてもらって、できれば動いてもらわなければ、意味がない。
この本には、それを地道に続けて来られた今村さんの思いが詰まっている。

私も自治体の財政課にいた人間として、
「財政課職員はもっと本音をさらけ出すべき」
「対話がなにより大切」
「査定無き財政課が理想」
といった今村さんの言葉には強く共感した。

これから先、自治体間の優勝劣敗がさらに明らかになっていくだろう。
国がなんとかしてくれる時代はとっくに過ぎているから、各自治体が何とかしていかなければならない。
そのとき、財政課だけがしゃかりきになっても、できることはたかが知れている。
では、どうやって巻き込んでいけばいいのか。
そのヒントが、この本には満載されている。

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