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映画評 「グリーンブック」 [映画評]

本作「グリーンブック」は、アカデミー賞の中でも最高の栄誉と言っていい、作品賞を受賞した。
しかし、どうやら誰からも祝福されての受賞ではないようだ。
賛否両論というより、むしろ否の方が多いように思える。

反対意見として多いのは、
「白人目線で描かれた白人を喜ばせるための映画」
との批判である。
差別の描き方が生易しく、
黒人を寛容に受け入れる白人を描くことで白人の気分を良くさせる映画に過ぎないと言われている。
表彰式の壇上に白人がずらりと並んだことも含め、
「ハリウッドはちっとも変っていない」
と嘆く人も少なくない。

そんなに酷評されるアカデミー受賞作ってどんなのだろう、
と好奇心と不安が入り混じった感情で観に行ったが、
いや、普通にいい映画だった。
確かに、差別の表現は甘いと言えば甘いし、オチに向かっての予定調和感が強い。
当事者からすれば、「なんじゃ、こりゃ」なのかもしれない。
しかし、エンタテインメント作品としては、十分に楽しめる。

批判している人は、映画とドキュメンタリーを混同されておられるのではないだろうか。
映画は、あくまで大衆向けのエンタメである。
その枠内で観たとき、しっかり作られた映画だと思う。

映画では、黒人ピアニストのドン・シャーリーと、彼に運転手として雇われたイタリア系白人トニー・リップの二人による、演奏旅行の様子が描かれる。
徐々に友情が芽生えてくるのが見せ場で、主演の二人は見事な演技を見せておられる。
ちょっと二人の描き方がステレオタイプに過ぎる感もないではないが、そのおかげでわかりやすい話になっている。
一つ一つのエピソードの描き方も、過大な演出が抑えられつつ、しっかり伝えられるべきは伝えられており、脚本と演出の冴えが感じられる。

「グリーンブック」はさすがの出来栄え。
歴代のアカデミー賞作品と比較した場合どうなのかなど、異論もあるだろうが、あまりハードルを上げ過ぎるのもフェアではない気がする。
ちゃんといい映画である。

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