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映画評 「音楽」 [映画評]

私は、この映画のことをどこで知ったのだろう。
はて?記憶がない。
東京では、新宿武蔵野館だけでやっていて、劇場のホームページを見ると、
なにやら満席状態。
初期衝動たる音楽を、突き抜けた感覚で描いた作品で、
制作期間は約7年超、
作画枚数は40,000枚超ですべて手描き、
クライマックスの野外フェスシーン をダイナミックに再現するため、実際にステージを組みミュージシャンや観客を動員してのライブを敢行、
などと聞くと、これは観に行かねばと。
私もロックミュージシャンの端くれ(?)であるし。

この世界観は、シュール、という区分になるのだろうか。
わけがわからない展開が続く。
自由な作画の自由なアニメ。
展開も奔放そのもの。
面白いと言えば面白いし、笑えるところもあるし、
広く言えば好きな映画と言えるのだが、
なんだろう、もう一息物足りない。
へんてこ話で終わってしまったような気がして、もったいない。

このハチャメチャぶりがいいという方も結構おられるだろう。
その気持ちもわからないではない。
そう思わせる力も確かにあった。
ロックの初期衝動も感じなくもなかった。
それでもなんだかもったいない。
もっと遠くに行けたのではないか。
行けるチャンスはあったのではないか。
そんなチャンスがある映画など滅多にないだけに、ううむ、もったいない。

声優さんは、みなよかった。
岡村靖幸さんの声というか歌というかが出てくるのも見せ場。

「音楽」は、あまり観たことのない映画。
楽しいし、最後まで観させてくれるが、
もうちょっとどうにか、と思った。
ただ、心が動く作品ではある。

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私が勝手に選ぶ 2019年の一曲は、ハルレオの「誰にだって訳がある」 [ヨモヤ]

私が子供だった頃、
大晦日のレコード大賞は国民的関心事だった。
しかし、昭和から平成に時代が移るころには、
すっかり権威を失ってしまった。

2013年以降の受賞曲を見ると、
2013年:EXILE PRIDE 〜こんな世界を愛するために〜 EXILE
2014年:R.Y.U.S.E.I. 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE
2015年:Unfair World 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE
2016年:あなたの好きなところ 西野カナ
2017年:インフルエンサー 乃木坂46
2018年:シンクロニシティ 乃木坂46
2019年:パプリカ Foorin
私が疎いのかもしれないが、どの曲も歌えないし、流行ったという記憶もあまりない。
時代が変わり国民的な流行歌が生まれなくなったということなのだと思うけれど、
であれば、アーチスト間投票などで、
真に優れた楽曲やアルバム、ミュージシャンを表彰するようにすればいいのに、
などと思うが、まあ大きなお世話だろう。

それはそれとして、勝手に2019年の一曲を選んでみたい。
こちらは全く個人的に選ぶものなので、
レコ大どころではなく大衆性を獲得していない曲を選んでしまうことをご容赦願いたい。

私の一曲は、ハルレオの「誰にだって訳がある」である。
ハルレオって誰だ、という話だが、
映画『さよならくちびる』に登場する
門脇麦演じるハルと小松菜奈演じるレオから成る女性ギターデュオである。

映画の中では、秦基博さんが作った「さよならくちびる」という曲と、
あいみょんさんが作った「たちまち嵐」「誰にだって訳がある」の2曲が披露される。
門脇さんと小松さんの歌は、特別うまいというわけではないのだが、
映画の雰囲気と相まって、伝わってくるものがある。

「誰にだって訳がある」という曲には、あいみょんさんから次のメッセージが寄せられている。
“皆それぞれ、理由があって今その場に立っていて、好きな物にも嫌いな物にもきっと理由がある。
傷つくこと、泣きたくなることや嬉しくなることにも。
沢山の感情を背負って心臓を走らせ生きているハルとレオに、少し訳ありの歌を作りたいと思いました。“

そう、
普段ニコニコ笑っている人も、
何を言われても気にしていないような人も、
自分よりずっと強そうな人も、
誰にだって訳がある。
私にとって、勇気づけられる曲だった。

残念ながら、YouTubeにMVは上がっていない。
こちらで音を楽しんでください。
https://www.youtube.com/watch?v=jGQ1O-hjiuY

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老後資金 貯められなくはないし、「貯められない」と思っても絶望してはいけない [資産運用]

朝日新聞社が「長寿時代のお金意識」をテーマに郵送方式の世論調査を行ったそうだ。
現役世代に、退職金を含めて老後までにいくら蓄える必要があると思うかを尋ねたところ、
「2千万円」が最も多く28%だったという。
「8千万円必要」などというネット情報もあるが、そこまで必要だとは思われていないようだ。
2千万円という金額は、昨年金融庁が公表した報告書の中に書かれてあった金額とも一致する。

その老後資金について、「貯められるかどうか」と聞いてみると、
残念ながら、70%の人が「貯められない」と答えたそうだ。
これは困ったことになるのだろうか。

ちなみに、すでに年金をもらっている世代に、必要と思う老後資金を貯められたか聞いたところ、
「貯められた」は18%しかいなかったという。
とはいえ、貯められなかった残り82%の人が、皆生活できていないかというとそんなことはないはずである。
つまり、必要額を貯められなくても、貯められそうになくても、
絶望する必要はない。
なんとかなる。

貯金がほとんどできていない人からすれば、2千万円は大きなハードルに見えるだろうが、
退職金が出る会社なら、それだけで何とかなる。
公務員も大丈夫である。
問題は、退職金制度がない会社に勤めている場合であろう。

30歳から月2万円ずつ貯めて、ボーナス時は別に5万円貯めるとすると、
年間29万円、
30年間で約900万円になる。
2千万円には届かないが、老後資金はいっぺんに必要になるわけではないから、
これだけあればなんとかなる。
また、貯金ではなく投資の要素を含めて貯めていけば運用益が乗ってくる可能性もある。
だから、諦めることはない。

資産運用には否定的な方もおられるが、私は少しずつでもやった方がいいと思う。
株式投資がお勧めだが、ハードルが高ければiDeCoからでも始めよう。

年金をはじめ、国の制度には不備が多いが、それを嘆いているだけでは何も変わらない。
無理せず、しかしできることからやるのが資産づくりの鉄則である。
そして、コツコツ続けてあきらめないことも大切だ。
自分のため、家族のため、できることはしっかりやっておこう。

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映画評 「MANRIKI」 [映画評]

本作は、トンデモ映画である。
作り手も、トンデモ映画と言われることを忌みはしないだろう。
だって、トンデモだから。

映画はエンタテインメントであると同時に、表現方法の一つでもあるので、
思い切りバットを振るのもアリである。
できれば、ブン回しながら大衆性も獲得していただきたいが、
さすがにそんな作品は滅多にない。
であれば、当てに行って何の足しにもならない作品より、
バットを目一杯長く持って思い切り振り回した挙句、全くの空振りという方がましである。
今作は、それ。
とても人に勧める気にはなれないが、観たことに後悔はない。
こういう作品もあっていい。

ストーリーは、
自分の顔が大きいことにコンプレックスを感じている新人モデルが、
小顔矯正をしようと訪ねた先に、万力を使う整顔師がいて・・・・
という感じだが、終始ハチャメチャなので、筋を追うことに意味があるとは思えない。
芸人の永野さんの世界観に、
斎藤工さんが悪乗りした格好。
なんでも、
永野さん、斎藤工さん、音楽の金子ノブアキさん、清水康彦監督は、「チーム 万力」というらしい。
そのメンバーで、行けるところまで行ってしまった、という感じ。
よく公開までこぎつけたものだと、妙なところに感心する。

この映画を人に勧める勇気は私にはない。
しかし、観た方がいいかどうか聞かれたとしたら、「観ない方がいい」とは思わない。
勇気を持って「観る」という選択肢もあっていい。
その勇気を私は称賛したい。
コアな映画ファンなら、「スター・ウォーズ」や「男はつらいよ」よりこちらを試す手はきっとある。

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女性活躍が進まないのは男のせいですか? [ヨモヤ]

わかっていても、
「言うだけ野暮」
ということがある。
「それは言わない約束」
ということもある。
まあ、確かにそうだが、そうやってみんなが口をつぐんでしまうのもどうだろう。
ここはちょっと、言わずもがなのことを言ってみよう。
「え、女性活躍が進まないのは、男のせいですか?」

日本経済新聞に、働く女性2,000人へのアンケートが2週にわたって掲載されていた。
最初の週に載っていたのは、管理職への意欲についての調査結果。
それによると、
女性で、管理職(課長職以上)に「なりたいと思う」人は17.6%で、
前回2年前の調査より2ポイント減ったのだという。
逆に、「思わない」人は64%となり、
前回より4ポイント以上増えている。

そして、管理職になりたくない理由を聞いたところ、
「責任が重くなる」 66.1%
「精神的な負担が大きい」 62.7%
「自分には向かない」 50.9%
「長時間働かなくては ならなくなる」 41.6%
「部下を率いる自信がない」 34.1%
という順だった。
この結果だけを見ると、要は「大変だからやりたくない」ということのようだ。
わかる。
そりゃ、そうだろうと思う。
男だって、やりたくない人は増えている。
まあ、それでもやるのだが。

しかし、2週目に掲載されていた「女性活躍が進まない原因」を読んで、
「あれ?」となった。
女性の圧倒的多数が管理職にはなりたくないと考えていて、
その理由は「大変だから」と答えているにも関わらず、
女性活躍が進まない原因としては、
「男性中心の企業組織風土」 42.9%
「男性は仕事で女性は家庭という性別役割分業意識」 38.8%
「育児とキャリアアップを両立できる環境が整っていない」 38.7%
「男性の家事・育児への不参加」 34.4%
「長時間労働を是とする働き方」 30.4%
の順だったからである。

え、女性は大変だから、自らの意思で管理職になりたがっていないはずなのに、
結果責任は男側なの?
それはちょっとないんじゃないかしら。
女性活躍が進まないのは、女性がそれを望んでいないから、
もっと言えば、大変なことはやりたくないと思っていないから、ではないのかしら。
少なくとも、アンケート結果はそれを暗示している。
(アンケートの設問があまりよくなかった、という可能性は否めないが)

この日経の特集は、
「女性活躍は男性側の意識改革にかかっているともいえそうだ。」
という言葉で締めくくられている。
「ともいえそうだ」というあいまいな表現が新聞らしいが、
男性側の意識改革以外の面があることを認めていると言えなくもない。

賢明な読み手の皆さんはとうにご承知のことと思うが、
私は、女性が悪いとか、そういうことを言いたいのではない。
ただ、現実はしっかり見る必要がある。
女性が、自ら今のありようを選んでいる面が強いことから目を背けて、
自虐的に男が男を責めたところで獲られるものはない。

まあ、言わぬが花、ということなのかもしれないけれど。

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今年は特にガッカリ 日本アカデミー賞のノミネート作品 [映画評]

それを言ってしまっては身も蓋もないが、日本アカデミー賞に大きな価値を認めている映画ファンは、
あまり多くないだろう。
何故かと言うと、
評価されるべき作品が評価されず、
評価されるべきではない作品が評価される、
ということが繰り返されているからである。
例年、最優秀作品賞こそまずまずの納得具合だが、
5本選ばれる優秀作品賞の中には首を傾げたくなく作品が少なくない。
今年もそうなってしまった。

優秀作品賞に選ばれたのは以下の5作品。
「キングダム」
「新聞記者」
「翔んで埼玉」
「閉鎖病棟―それぞれの朝―」
「蜜蜂と遠雷」

ほぼコンテストシーンだけで映像化しきった「蜜蜂と遠雷」と、
極上のエンタメに仕上げた「キングダム」は納得として、
他の3作品はどうだろう。
「翔んで埼玉」は楽しませてもらったが、「ある意味面白い」という作品。
興行的に評価されればそれで十分ではないだろうか。
「閉鎖病棟―それぞれの朝―」は、いい映画っぽいしつらえだが、抜けが多く入り込めない。
「学校の怪談」「学校の怪談2」「愛を乞うひと」といった平山監督の過去の作品と比べると、数枚落ちる感じがした。
そして、「新聞記者」。
社会派に区分されるのだろうが、内容はペラッペラ。
この作品が2019年の5本に選ばれることがいろいろな意味で心底悲しい。
藤井道人監督は、重いテーマを正面から描き切った「デイアンドナイト」という映画を撮られている。
こちらが評価されるのならわかるのだが。

例年のことだが、優秀作品賞と監督賞と脚本賞などで作品がダブる。
今年は以下のノミネート。
優秀監督賞
佐藤信介「キングダム」
周防正行「カツベン!」
武内英樹「翔んで埼玉」
平山秀幸「閉鎖病棟―それぞれの朝―」
藤井道人「新聞記者」

優秀脚本賞
片島章三「カツベン!」
詩森ろば、高石明彦、藤井道人「新聞記者」
徳永友一「翔んで埼玉」
平山秀幸「閉鎖病棟―それぞれの朝―」
三谷幸喜「記憶にございません!」

失礼ながら、なんだか力が抜ける。
本当に、ちゃんと映画をご覧になっている方が選んでいるのだろうか?
本当に、映画を愛している人たちが選んでいるのだろうか?

「日本アカデミー賞にムキになるなんてどうかしてる」と言われればそのとおりだろう。
しかし、映画好きとしては、ちゃんと作られた映画が正当に評価されて欲しい。
それが映画の未来につながると信じるから。
心からそう思う。

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映画評 「カイジ ファイナルゲーム」 [映画評]

「カイジ ファイナルゲーム」は映画版カイジの3作目。
第1弾の「カイジ 人生逆転ゲーム」が2009年、
第2弾の「カイジ2 人生奪回ゲーム」が2011年だから、
随分久し振りの続編である。
一応、これが最後との触れ込みであり、
タイトル的にも完結編っぽくなっているが、実際のところどうなるかはわからない。
ただ、藤原竜也さんの年齢(37歳)を考えると、今作がギリギリかもしれない。

本作は、前2作のファンの方々には、どうも不評のようだ。
ギャンブルシーンの駆け引きが今一つなのだろう。
確かにツッコミどころは満載だし、
先を読めてしまう感もあった。
全体的にゆるいし。

しかし、本作はよきにつけ悪しきにつけ漫画である。
あれやこれやにこだわることもない。
細かいストーリーや人物描写抜きに、
わかりやすく善玉と悪玉を対比させる手法に、私はむしろ好感を持った。
オチも、はまった感はないのだが、これはこれで。
2時間、ややこしいことを考えずに、ただ楽しめばいい映画である。
まあまあ楽しいではないか。

藤原竜也さんは、いつもと変わらぬ圧巻の演技。
こういう役がとにかく似合う。
吉田鋼太郎さんの悪役もビシッとはまっている。
楽しんで演技しておられる感じが伝わってきて、こちらも楽しい。
もう一人の悪役、福士蒼汰さんも熱演されていた。
ヒロイン役の関水渚さんは、「町田くんの世界」に引き続き、私にはピンと来なかった。
新田真剣佑さんも、なんだかもったいない役だった。

「カイジ ファイナルゲーム」が、ツッコミながら楽しむ映画。
深く考えず、藤原さんの演技を堪能しよう。
ビールを飲んでいる姿を見せるだけで金がとれる、まったくもって稀有な存在である。

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2019年の日本映画を振り返る その2 「私の選ぶ2019日本映画ベスト10」 [映画評]

去年観た映画は106本、そのうち邦画が92本。
基本的に、新作ばかりである。

去年を振り返る企画その1では、邦画の中の「困った映画」について書いたが、
今回はいい映画について書く。
当然、こちらの方が気持ちがいい。

「困った映画」にもたくさん出会った2019年だったが、いい映画の方が多かった。
そこから10本を選ぶのはなかなか難しい。

絶対に外せないのは、
「洗骨」 ガレッジセールのゴリさんが監督。笑えて泣ける。傑作。
「殺さない彼と死なない彼女」 2019年の収穫。「好き!」「未来の話をしよう」
「Bの戦場」 ガンバレルーヤのよしこさん主演。最初から最後まで期待どおりに面白い。
「ウィーアーリトルゾンビーズ」 最も才気を感じた作品。多くの人に観てもらいたい。
の4本。
大好きな映画たちである。

「ひとよ」も、白石和彌監督作品ということでハードルが上がってしまうが、やはりいい映画だった。
あいみょんの曲も含めてよかった「さよならくちびる」も入れたい。
となると、ここまでで6本。
あと4本である。

私が厳選ノミネートしたのは、
「キングダム」「空の青さを知る人よ」「愛がなんだ」「プロメア」「アルキメデスの大戦」
「冴えない彼女の育てかた FINE」「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」
「デイアンドナイト」「ダイナー」「センコロール コネクト」「宮本から君へ」
「惡の華」「任侠学園」「3人の信長」
の14本。
ここから4本、苦しいが選ばなければベスト10にならない。

壮大なスケールの原作を、エンタテインメントとしてきっちり仕上げ、興行的な成功も勝ち取ったという点で、「キングダム」は立派だった。
これは、評価されるべきだろう。

「空の青さを知る人よ」は、個人的にはまってしまった作品。
映画的な価値は高くないのかもしれないが、好きなものは好き。

あと2本は悩むが、他の映画賞で評価されている作品などにはご遠慮いただくこととして、
「惡の華」と「3人の信長」を選ぼう。
「惡の華」は、やりたい放題やった感じだが、ラストの切なさは一番。
「3人の信長」は、テンポのよさが楽しかったし、ギラっとしたものも感じた。

結果、私の10本は以下のとおりである。
「洗骨」
「殺さない彼と死なない彼女」
「Bの戦場」
「ウィーアーリトルゾンビーズ」
「ひとよ」
「さよならくちびる」
「キングダム」
「空の青さを知る人よ」
「惡の華」
「3人の信長」

ここまでに挙げた映画以外では、
「凪待ち」「翔んで埼玉」「メランコリック」「火口のふたり」「マスカレード・ホテル」
などが楽しかった。

2020年も、素敵な映画に出会えることを楽しみにしている。
きっと会えるはずだと信じている。

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ダルビッシュさん 大丈夫?  ~ 投球制限論が急に経済界に跳び 日本批判につながる不思議 ~ [ヨモヤ]

ここ数年、高校野球の投球制限論が盛り上がっている。
何故だろう?
高校野球が連投になるのは今に始まったことではないし、
むしろ以前よりは日程に余裕ができている。
高校球児たちが声を上げているわけでも、全然ない。
あえて言えば、暑いからなのだろうか。
それとも、何かと口をはさみたい、我慢ができない、
責任を取りたくない大人が増えたからだろうか。

私は、制限は必要ない、という立場である。
このブログにも繰り返し書いてきた。
そもそもプレーしている高校生たちが望んでいないし(各種アンケートではっきりしている)、
高校生たちにとっては甲子園が最高の舞台であり、ここで燃焼する方がいいだろうし、
勝つチームが決まってしまうことにも疑問を感じるからである。

投球制限論のプロ野球選手の中での急先鋒の一人がダルビッシュさん。
『REAL SPORTS』の独占インタビューでもそれを語っておられるので、興味深く読んだが、
あれ、なんだこれ?
変てこりんなことをおっしゃっている。
ネットの記事を引用して、検証してみたい。
ちょっと長いが、切り取ったように思われるのもなんなので。

・・・・ ここから引用 ・・・・
ダルビッシュ:そうですね。球数制限の議論の中で一番多いと思うのが、「高校野球の選手は3年間しかない」「プロを目指している選手ばかりではない」と。だから、「そういう選手たちの思い出のためにも球数制限を設けるべきではない。それに、厳しい状況に置いたほうがその選手の将来に生きてくる」。こう言う人がすごく多いんですよ。

 でも、日本経済界に優秀な人材がどれくらいいるかを見ると、他の国に比べて少なくないですか? 例えばアメリカ。いわゆる先を行っているこの国には優秀な人材がたくさんいます。アメリカには根性論のような考え方がないのに、なぜそんなに優秀な人材が生まれるのか。それってきっと、人生でたくさん訪れる苦しい場面を乗り越えていくための打開策を、自分自身で考えているからだと思うんですよね。
・・・・ 引用終わり ・・・・

一段落目と二段落目に滅茶苦茶な飛躍があるのだが、それはひとまずおいておいて、
一段落目について考えてみたい。
ダルビッシュさんは、
“球数制限の議論の中で一番多いと思うのが、「高校野球の選手は3年間しかない」「プロを目指している選手ばかりではない」と。”
とおっしゃっている。
これはそのとおりである。
私もそう思う。
しかし次の言葉、
“だから、「そういう選手たちの思い出のためにも球数制限を設けるべきではない。それに、厳しい状況に置いたほうがその選手の将来に生きてくる」。こう言う人がすごく多いんですよ。”
というのには首を傾げる。
厳しい状況に置いた方がその選手の将来に生きてくるから連投させるべき、
などということは、少なくとも私は聞いたことがない。
そもそも、連投することになるのは勝ち上がった場合のみであり、
将来に生かすために連投させるわけではない。

続けて、さらに「?」が渦巻く二段落目。
“でも、日本経済界に優秀な人材がどれくらいいるかを見ると、他の国に比べて少なくないですか? 例えばアメリカ。いわゆる先を行っているこの国には優秀な人材がたくさんいます。アメリカには根性論のような考え方がないのに、なぜそんなに優秀な人材が生まれるのか。それってきっと、人生でたくさん訪れる苦しい場面を乗り越えていくための打開策を、自分自身で考えているからだと思うんですよね。”

最初の「でも」は、
「連投させれば将来につながるという人がすごく多い。でも」
というつながりである。
そんなことを言う人は、すごく多いというより、少なくとも私は聞いたことがないが、
もしそういう人がいたとして、
連投させたのに経済界に優秀な人がいないのはおかしい、
というのは一体どういう思考回路なのだろう。
高校野球での連投は、経済界に人を送り出すためではないのだが・・・。

また、アメリカと日本を比較するのもフェアではない。
アメリカは市場規模が世界一の覇権国であり、言葉の問題も含め、圧倒的に有利な立場にある。
アメリカでの成功は、そのまま世界市場での成功につながる。
他の欧米諸国や人口の多いアジア・アフリカ諸国と比べて、
日本がそれほど劣っているとは思いにくい。

しかしまあ、連投=根性論と決めつけ、
根性論の割には経済界には人がいない、
と、しっちゃかめっちゃかに論を展開されるので、真面目に反論するのも野暮であろう。

ダルビッシュさんのインタビューの揚げ足取りをするつもりはないが、
あまりにも陳腐な内容に驚いた次第である。
ただ、投球制限論を強く唱えている方の論拠がこんな感じであることは、
制限反対論者である側からすれば朗報と言えなくもない。
議論に勝ったところで、投球制限の流れが止まるとは思えないが。

ダルビッシュさんのインタビューはこちらから
https://real-sports.jp/page/articles/345850526409163798
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2019年の日本映画を振り返る その1 「困った映画たち」 [映画評]

去年も多くの映画を観た。
改めて数えてみると106本だった。
100本を超えているとは、我ながらちと驚いた。
そのなかで邦画は92本。
もちろん、公開作品を残らず観ることなどできるはずもないが、まあまあの数である。

作り手の皆さんは、それぞれ懸命に作っておられるのだろうと信じたいが、
「なんだこりゃ?」
という作品も少なくない。
私の個人的な嗜好なので、人によって感じ方はそれぞれだろうが、
「それにしても・・・」という映画も散見される。
今回は、困った映画を振り返ってみよう。

正直なところ、つまらない映画、どうにもならない映画、というのはポロポロある。
ここで取り上げるのは、期待外れ、残念、という映画と理解していただきたい。
つまり、もっとひどい映画はいくつもあった。

まずは、「劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~」。
大ヒットしたドラマの映画化であり、大きな期待を持って封切られたが、
安易な企画、雑なストーリー、稚拙な演出と美しくない映像、安っぽい特撮シーン、
と駄作パターンの典型。
ドラマファンは、どんな気持ちでこれをご覧になったのだろう。

んな映画あったっけ、という人も多いだろうが、「サムライマラソン」も酷かった。
佐藤健さん、小松菜奈さん、森山未來さん、染谷将太さん、豊川悦司さん、長谷川博己さん、
というメンバーを揃えて、映画はハラホロヒレハレ。
誰かなんとか言わないのかしら。

意外なヒットとなった「新聞記者」も映画としては困りもの。
現政権を批判する内容が話題を呼んだが、映画そのものはスカスカのペラペラ。
政権批判をしていればそれだけでうれしいという方が支持するのだろうか。
映画って、そんなに安いものではないと思う。

期待を裏切られた、という点では、「町田くんの世界」と「屍人荘の殺人」。
両作とも、1から10までダメダメ、というわけではなかったのだが、こちらが期待を高め過ぎた。
「町田くん」は、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」がしびれた石井裕也監督で、
勝手に2019年の本命と決め込んでいた。
印象の薄い作品で、ガッカリ。
「屍人荘」は、神木隆之介くん、中村倫也さん、浜辺美波さんというキャストに、
「任侠学園」が痛快だった木村ひさし監督で、
こりゃもう外しようがないと思っていただけに、はにゃー。

「男はつらいよ お帰り 寅さん」は、撮られるべきではなかった作品だと思う。
「引っ越し大名」は、今が旬の星野源さんを使いながら、実にもったいない。
「楽園」は、傑作傑作とあおった割に凡庸な作品で肩すかし。

アニメ作品では、
「えいがのおそ松さん」「ONE PIECE STAMPEDE」「バースデー・ワンダーランド」
といった作品にがっかりさせられた。

その他、
「この道」「影踏み」「僕に、会いたかった」「轢き逃げ 最高の最悪な日」
などが残念組。
本当は、まだまだあるのだが、この辺にしておこう。

一生懸命作っても、つまらない作品になってしまうことはあると思う。
それは仕方がない。
誰にだって失敗はある。
しかし、魂がこもっていない、映画への愛がない、観る人をなめている、
そんな作品には怒りが込み上げる。

じゃあ、そんな映画観なければいいじゃないか、と言われそうだが、
観てみないとわからないのが映画である。
ちまたの評判が悪くても、観てみたら面白かったり、
ヒットしているから観に行ったら、「なに、これ?」だったり。

2020年、失敗作に数多く出会うことも覚悟している。
しかし、せめてしっかり振り切ってほしい。
映画を作れる立場にいることへの感謝と喜びを忘れないでほしい。
映画ファンからの、作り手へのお願いです。

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