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急な財政破綻を招かない鍵はおそらく正直であること [公会計]

6月28日付の日本経済新聞に、
「財政破綻リスクに蓋するな 『ある日突然』やってくる」
との見出しをつけた論説記事が掲載された。

論説は、G7各国のコロナ対策を概観しつつ、コロナ後の財政立て直しについて書き、
いろいろな団体や専門家のコメントが紹介されている。

例えば、経済同友会は、
積み上がった債務をどう返してゆくのか、早急な議論を求める提言を出し、
コロナ対策費を特別会計に分離し、通常の予算編成とは別に長期の計画的な増税で財源を確保する手法を訴えているという。

同友会の経済財政推計プロジェクトチームを率いたリコーの神津多可思フェローは
「まずは財政の発散を止める。ゴールを定めて懸命に走り続ける」
と主張されているらしい。

みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫エグゼクティブエコノミストは
「財政規律は必要だが、債務が膨大になったのは民間に余ったお金を必要なところに流す財政の機能が働いた結果だ。金利上昇、インフレ、民間資金調達の障害など副作用は出ていない。自覚症状がないのだから財政再建はゆっくりと」
と語られているという。

一方、佐藤主光一橋大教授は、
「自覚症状がなくても深刻さが増している可能性がある。経済動向をふまえた長期の増税シナリオを政治の責任でいくつか用意すべきだが、お上は知らしむべからずを、国民は知らぬが仏を決め込んでいる。未来を見せぬようにしているのが問題だ」
とおっしゃる。

中部圏社会経済研究所の島澤諭研究部長は、
「財政破綻は日常の延長線上に起きるのではなく、ある日突然起きるものだ」
と考えておられるそうだ。

そして、日経の記事は
「非日常の日常化に慣れきってしまうのは、危うい」
と締めくくり、ある日突然起こりうる財政破綻に備えるべき、と主張される。

財政破綻をどのような状況と捉えるのかは議論が分かれるところだが、
日経が言うように「ある日突然」起きるかというと、そんなことはないと思う。
もし起きるとしたら、想定外のことが起きたときだろう。
ではその想定外とは何か?
未曽有の大災害であった東日本大震災の際にも日本国債への信認は揺るがなかったし、
コロナ対策での大量の赤字国債発行でも市場は動かなかった。
こうした突発時が影響するわけではなさそうだ。

では、現実に危機を招いている国では何が起きたのだろう。
新興国や途上国は日本とは大きく異なる事情を抱えているので、
ユーロ圏内で危機を起こしたギリシャの例を見てみよう。
もともとギリシャは、財政赤字が多いことで知られていた。
日本と同じである。
ギリシャが危機に陥ったのは、
政権交代が行われた際、旧政権下での財政赤字の隠蔽が判明したのが引き金だった。
つまり、それまで織り込まれていたことが事実ではなかったことが知れ渡り、
それがショックを与えたのである。

ここから得られる教訓は、
財政が厳しければ厳しいと正直に言うことが大切、
という至極当たり前のことである。
ギリシャには、ユーロに加盟する国の場合、
その基準を守らなければならないという特殊事情があったにせよ、
嘘をついてはいけない。
嘘をつくとその嘘を隠すためにまた嘘をつくようになりがちだし、
ばれてしまった場合のダメージは計り知れない。

日本も、ひどい財政状況であったとしても、
それをきちんと公開しているうちは突然の危機には陥らないのではないだろうか。
実態を知っていれば、それを織り込んで行動できるからである。
だから、どんなにひどくてもまずは正直に。
それが財政再建への最初の一歩でもあると思う。

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