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映画評 「100日間生きたワニ」 [映画評]

本作は、「100日後に死ぬワニ」を原作としている。
2019年12月12日からTwitterアカウントで公開が開始され、
「死まであと○日」と明示されたワニの100日間を、4コマを1日として描いていたそうだ。
私は無関心なままだったが、当時は大きな評判となり、
連載終了日の2020年3月20日にはTwitterのトレンドで世界1位となったという。
その後、商業展開への批判が巻き起こり、さんざん叩かれたことは私も知っている。

愛読者でもなかった私は、本作の映画化を待望していたわけでは全然ないし、
映画化されたと聞いても観に行く気はなかった。
しかし、監督が「カメラを止めるな!」の上田慎一郎さんと聞いて気が変わった。
奇跡の傑作である「カメ止め」を作られた上田監督がこの難しい作品をどう料理されるのか、
急に楽しみになった。
前評判は史上空前の悪さだが、評判が悪くてもいいものができる可能性はある。

というわけで先入観なく観たのだが、
うん、ちょっとしんどかった。
前半後半とくっきり分かれていて、
前半がTwitterで連載されていた内容のダイジェスト的な内容で、
後半がその後日譚的な感じ。
前半では何も起こらず、
後半でも何も起きなかった。
何も起きなくても、いい作品はいいものだが、
本作の場合、ただ何も起きなかったという感じである。

初見の私には、ワニくんに対する感情移入は全くできなかった。
毎日少しずつ読み進めていれば違うのだろうが、
大きなスクリーンの中のワニくんは、映画の主役を張れる存在には見えなかった。

後半はカエルくんが登場。
ワニくんに輪をかけてメインを張れる存在ではなく、
「あれ、私は今ここでなにをしているのかしら」
という不思議な浮遊感を得ることができた。

お客さんはまばら。
どこの映画館でも同様のようだ。
最初はまばらな映画館が、クチコミによって少しずつ埋まっていく、
というストーリーも、本作では期待できそうにない。

時間が60分と短いのが救いだが、
その分安いわけではなく。
これを120分見せられたらしんどかっただろうから短いのは大歓迎だが、
もやもやもや。

上田監督は、「カメ止め」の後、
評価的にも興行的にも、厳しい作品が続いている。
次回作は、背水の陣になる気がするが、
そうなった方がいい作品を作られる方なのかもしれない。

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