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映画評 「太陽の子」 [映画評]

戦争をしたこと、
国内外に災禍を及ぼしたこと、
原爆を落とされたこと、
日本各地が非戦闘員である市民を無差別に殺傷する空襲に見舞われたこと。
日本人が決して忘れてはならない記憶だと思う。
今の視点で過去を断罪するのではなく、
しっかりと噛みしめたい。

今年は、コロナとオリンピックでそうした空気にはなりにくいが、
例年夏になると、先の大戦を振り返る報道がなされる。
反省すべき点は反省しつつ、
自分たちの先輩たちを、敬意を持って見つめることも忘れないようにしたい。

本作「太陽の子」は、
京都大学を舞台に、太平洋戦争末期に原爆の開発研究に加わった若き研究者の青春と葛藤を描いている。
敗色濃厚のなか、起死回生の新型爆弾の開発に携わりつつ、
物量的にも、時間的にもとても間に合わないこと、
本当にこの研究を続けるべきなのか踏ん切りがつかないこと、
などで、研究者たちの気持ちは一つにまとまらない。
ある程度実話に基づいた話のようだが、
研究に向かった若者たちにとって、苦しく、むなしい日々であったのだろうと察する。

本作では、当時の研究室の様子が上手に再現されていた。
実際のものとは違っているかもしれないが、
その場に集う若者たちの熱や戸惑いも伝わってきた。

ただし、映画全体として成功しているかというと、そこまでではない。
家族の関係や淡い恋も描かれるのだが、
グッと来るところまでは至らない。
もう少し、何かに焦点を絞れればよかったのだろうか。

主演は、柳楽優弥さん。
柳楽さんの演技はいつも迫ってくるものがある。
共演は、三浦春馬さん。
いつ頃撮られたなのだろうか。
演じながらどんなことを感じておられたのだろうか。
ヒロインに、有村架純さん。
安定感さえ覚える存在になられている。

「太陽の子」は、惜しい作品。
興味深いテーマであり、
戦時中の様子をうまく伝えている面もあると思うが、
散漫な印象が残る映画となってしまった。

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