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映画評 「キネマの神様」 [映画評]

山田洋次監督作品。
現在89歳の山田監督は、日本映画を代表する巨匠と言っていい存在。
「男はつらいよ」シリーズは、まさに偉業と呼ぶにふさわしい。
しかし、過去の作品への敬意はしっかり持つとして、
新作については一つの作品としてきちんと評価するのが礼儀であろう。
山田作品だからと下駄を履かせてはかえって失礼である。
実際、近作の
「妻よ薔薇のように 家族はつらいよⅢ」
「男はつらいよ お帰り 寅さん」
といった作品は、かなり残念な出来栄えであったと思う。

本作は、松竹映画100周年を記念して製作されたもの。
タイトルからも映画愛にあふれた作品になるだろうと期待した。
主役を演じるはずだった志村けんさんがお亡くなりになるという衝撃を乗り越え、
沢田研二さんという得難い代役を得て公開にこぎ着けられた。
見逃すわけにはいかない。

序盤、沢田さんがダメ男ぶりを披露されるのだが、これが今一つ中途半端。
実際にはこういう方が多いのだろうが、映画で見るには、ふむ。

映画は、時をさかのぼり、青春時代へ。
当時の撮影所の雰囲気などは、なかなかに興味深い。
淡い恋愛模様も時代の空気を活かしている。

しかし、肝心の映画愛が伝わってこない。
菅田将暉さん演じる映画を志していた若者がどうしてあんな風に挫折してしまうのか。
映画が好きじゃなかったの?
なんじゃ、それ。

現代パートのダメ男さんからも、映画愛はうかがえず。
ダメな奴だけど、映画愛は凄い、という感がまるでない。
残念ながら、映画全編を通して、熱いものが伝わらなかった。
この題材で、
菅田将暉さん、沢田研二さん、
という役者を得てこの内容というのは、実にもったいない。

沢田さんは、志村さんに寄せた演技をされたのだろうか。
役を演じたというより、志村さんを演じた感がある。
歌を披露するシーンがこの映画のクライマックスかな。

ほかに出演は、永野芽郁さん、野田洋次郎さん、北川景子さん、寺島しのぶさん、小林稔侍さん、宮本信子さん。
かつての銀幕のスターを北川さんが演じられたが、これはなかなかはまっていた。
現代パートの寺島さん、小林さん、宮本さんは、この頃の山田作品の雰囲気そのまま。

本作「キネマの神様」からは、映画愛がまるで伝わって来ず、残念至極。
事前にしっかり睡眠をとり、手元にコーヒーを置くなど、万全の準備をしておかないと、
意識を飛ばされる心配が高いのでご用心。

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