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映画評 「散り椿」 [映画評]

本作は、作られることの少なくなった本格時代劇映画。
本格時代劇には、
学校もなければ会社もない。
タイムスリップも花火大会もない。
移動手段も、よくて馬。
だから、人間そのものが伝わってくる。

おそらく、時代劇の映画を作るのは、お金の面でも手間の面でも大変なのだろうと思う。
そこをあえて作るからこそ、時代劇は作り手の懸命さが伝わってくる作品が多い。
本作も、作り手の息遣いが聞こえてくるようだった。

映像は静謐かつ繊細で美しい。
すべてのシーンで思いが行き届いている。
主人公は禁欲的な侍らしい侍。
張り詰めた空気のまま映画は進んでいく。

丁寧に作られた、しっかりした映画だと思うのだが、惜しむらくは物語が弱い。
ストーリーがスカスカで、
悪役にも深みがない。
剣の達人に対してなぜ鉄砲を使わないのよ、という言っちゃいけない謎もはらみつつ。

主演は、大作映画の真ん中に居続ける岡田准一さん。
押しも押されぬ映画俳優である。
その他、西島秀俊さん、黒木華さん、池松壮亮さんら。
富司純子さんのお姿が目を引いた。

「散り椿」は、モントリオール世界映画祭審査員特別賞作。
一年に一本くらいは正統派時代劇を観たい、という方にはピッタリ。
秋になにかちゃんとした映画を観たい、という人にもはまる作品。
脚本に、もう一押し二押しあれば偉大な作品になった可能性もあったのだが。

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