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映画評 「若おかみは小学生!」 [映画評]

2018年日本映画界の最大の話題は「カメラを止めるな!」のブレイクだと思うが、そこまでの大ヒットとは行かなくても、公開後、口コミによって観客数を伸ばしている作品がいくつかある。
映画ファンとして、いい映画が正しく評価されて多くの人の目に触れるのは嬉しい。
そうした作品の一つが、アニメ映画「若おかみは小学生!」である。

「若おかみは小学生!」は、令丈ヒロ子さんによる児童文学。
累計300万部というベストセラーであり、テレビアニメ化もされた。
それを受けての映画化であり、上映館も初めからそれなりにあった。
その点は何もないところから公開された「カメラを止めるな!」とは大きく違う。
しかし、こうした展開での映画化の場合、原作やテレビで知っていた層だけに届けばいい、という作りになりがちであるから、大化けするような作品になるための難しさもある。
何もないところから作るより、かえって難しいことかもしれない。

私は、原作も未読だし、テレビアニメも未見である。
だから、正直なところ、この映画を観る気がなかったというより、公開されていたことも知らなかった。
評判を聞きつけての鑑賞であり、どうしてもハードルが高くなる。
目線を上げてしまうと反動が大きくなりがちで、ちょっと心配したが、期待にきっちり応えてくれる作品だった。
子供向けということもあってか、90分という上映時間の制約もあったそうだが、与えられた条件のなかでプロの仕事をされている。
「泣ける」
との評判だが、確かに泣けるシーンがあった。
私はなんとなく我慢してしまったが、ダーダー泣く人も少なくないだろう。

主人公は、もちろん小学生であり、旅館の若おかみとなる。
どうして小学生が若おかみとなるのか、知っている人の方が多いのかと思うが、私はそれすら知らなかったので、最初の展開に驚かされた。
ストーリーをぐしゃっとまとめると、
思いがけないことから若おかみとなった小学生が、いろいろなお客さんとのふれあいの中で少しずつ成長する物語、
である。
それほど突飛なストーリーではないが、だからこそ届きやすい。
いくつかのエピソードが積み重ねってラストにつながっていくのだが、一つ一つ、いい話だなあと思える。
ライバルを含め、悪い人が出てこないので、爽やかな気持ちで映画を観終われる。

ただ、いい映画だし、あたたかく泣けるが、同じように口コミで広がっていった他のアニメ映画「時をかける少女」や「この世界の片隅に」と比べると、そこまでのインパクトはない。
インパクトはなくても、いい映画はいいのではあるけれど。

「若おかみは小学生」は、評判どおりの泣かせる映画。
主人公である、おっこの頑張りを思わず応援したくなる。
魅力的な登場人物も多く、楽しい時間が過ごせる。
家族連れにピッタリだが、大人の鑑賞にも十分耐えるので、おひとりの鑑賞も大いにありである。
挿入歌の「ジンカンバンジージャンプ」も楽しいのだが、現時点ではネットで拾えず、それは残念。

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