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映画評 「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」 [映画評]

「トンデモ」というジャンルがある。
最も認知されているのは書籍の分野で、「日本トンデモ本大賞」なる企画まである。
トンデモなものは、歌にもあるし、舞台にもある。
そして、映画にもある。

トンデモは、多くはキワモノ扱いされ、実際にインパクトだけを狙ったものも少なくないのだが、中には本質が評価され、カルト的な人気を博すものもある。
だから、展開や設定がトンデモでも、それだけで拒否反応を起こさないようにしたい。
ひょっとしたらいいものかもしれないのだから。
確率はとても低くても。

本作「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」は、予告編を初めて観たときから公開を楽しみにしていた。
ロックを題材にしているところがまずもってツボだし、
多彩な登場人物が楽しませてくれそうだし、
阿部サダヲさんにハズレはなさそうだし、
吉岡里帆さんのコミカルな演技にも期待したからである。

しかし、
期待は裏切られるものであり、
トンデモの多くは取り返しがつかない代物になりがちである。
この映画では、始まってから終わるまで、耐えることを学ばされた。
最後まで騒がずに座ってちゃんと観続けた自分をほめてあげたいくらいである。
いやはや、長かった。

ストーリーがトンデモなのは織り込み済みだったのだが、そのトンデモが、とんと面白くない。
響くもの、伝わってくるものもまるでない。
ギャグ的なシーンもあるのだが、ほとんどがドンすべりであるため、ギャグであるかどうかさえよくわからない。

監督は三木聡さん。
他の作品も、かなりぶっ飛んだ内容が多いらしい。
観たことはないが、遡って観る気にはまったくならない。

阿部サダヲさんは、主演として映画を引っ張っておられる。
俳優としての力は今更言うまでもないが、俳優に出来ることには限界があり、この映画を「観られるもの」にするのは、その限界を超えていた。
吉岡里帆さんも、魅力全開とはいかず。

「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」は、タイトルが一番面白かった。
本編で面白かったところを思い出そうとするが、それはかなりの難問である。
トンデモにも十分なり切ったとは言えず、
音楽映画としても全く足りていないし、
コメディとしてもさっぱり。
吉岡さんのファンにとっても、それほど喜ばしい作品とも思えないので、誰にオススメしたらいいのか、路頭に迷っている次第である。
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