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映画評 「日日是好日」 [映画評]

先日NHKで、「“樹木希林”を生きる」という番組を見た。
NHKのディレクターが、亡くなるまでの一年間、希林さんに密着したドキュメンタリー。
改めて、希林さんのすごさ、面白さを思い知った。
となれば、日本での遺作となった本作を見逃すわけにはいかない。

茶道をテーマとした映画であり、あまり類作がない。
主人公を演技力に評価の高い黒木華さんが、その従姉を多部未華子さんが演じる。
ヒーロー的な俳優は出てこない。

お茶を始めるきっかけも、
日々もあれこれも、
どれも大きな波乱ではない。
逆に言うと、誰にでもありそうな話ばかりであり、それが胸に届きやすい面もある。
お茶の腕の成長と、
巡りくる季節が絡み合い、
静かに訴えるものがある。

ただ、あまりにもエピソードがブツ切れ過ぎる。
そのため、残念ながら入ってこない。
また、主人公のありようが全く魅力的ではなく、そこも感情移入を妨げる。
これは黒木さんが悪いのではなく、脚本と演出の問題。
くれぐれも寝不足で観に行かないように気を付けられたい。
すっと落ちてしまう可能性がある。

希林さんは、いつものように安定した演技。
これが最後かと思うと感慨が湧く。
「一期一会」という言葉についての場面では、映画の中の登場人物としてではなく、女優樹木希林さんの人生なども思い浮かび、出会いを大切にしようという気になった。
しかし、最後だからこそ、もう少しはっちゃけられなかったかという思いもある。
もちろん、監督は今作が最後になるとは思っていなかったのだから仕方がないが、もっと希林さんらしいシーンやセリフも欲しかった。
黒木華さんは、女子学生が大人になるまでの長いスパンを演じる。
学生の頃ははつらつと、大人になってから静謐に。
多部未華子さんは、始終元気な役。

本作は惜しい映画。
期せずして巡ってきた希林さん最後の日本映画作品という大チャンスを十分に活かしているとは言えない。
この題材で黒木さんと希林さんを得たのなら、もっと遠くまで行けた気がする。
黒木さんのファンにとっては、ほぼ出ずっぱりで顔のアップも多く、必見の作品であろう。
希林さんファンにとってはもちろん、
多部さんのファンにとってもいいだろう。

「日日是好日」と書いて、「にちにちこれこうじつ」と読む。
映画館の窓口で、「ひびこれこうじつ」とお間違えのないように。
言葉の意味は、映画を観て、それぞれが考えるというのがいいと思う。
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