SSブログ

書評 『公務員の「出世」の作法』 [読書記録]

「出世」。
ふむ。
死語とまでは言わないが、あまり聞かなくなった言葉である。
公務員、それもこの本がターゲットとしている地方公務員界隈では、なおさらではないだろうか。

著者の堤直規さんは、小金井市の職員。
本の中で堤さん自身、
「公務員にとって、『出世』という言葉は、ある意味、NGワード」
と書かれている。
組織の中で働く以上、昇進や昇格と無縁でいられるはずはないものの、
出世を気にするのは上品ではないし、
そこにガツガツするのは「ちと違う」ととらえられているからだろう。
ましてや、本にするとなると。
この本における「出世」は、必ずしも一般的な昇進のことではなく、「世に出る」ことを指しているとは言え、「出世」という言葉に敏感に反応される方もおられるだろう。
その意味では、著者はかなりのリスクを取られたと言ってもいいかも知れない。

本の中身はというと、「出世」のノウハウ本ではない。
「いかに働くべきか」ということについての、筆者の持論が書かれているという感じだろうか。
丁寧に書かれていて、いちいちうなずかされるものばかりなのだが、
決して堅苦しいものではない。
筆者の経験に裏打ちされた生の感想であり、読みやすく、かつ興味深い。
スラスラ読める本、というと、往々にして内容は薄かったりするのだが、
ぐんぐん読めてストンと腹に落ち、面白くもある。
文章が上手なので、すーっと入ってくる。

この本には、私も少しだけ協力させていただいている。(投球フォームの写真付き。といってもごく小さなものだが)
それだけにどんな本になるのか気になっていたのだが、想像以上に楽しく、役に立つ本に仕上がっている。
嬉しい。

本書は、現役地方公務員の方はもちろん、これからなろうとしている方にも、興味深く読める本だと思う。
また、公務員に限らず、すべての働く人に届く内容になっている。
リスクを取りつつ、素敵な本に仕上げられた堤さんには、心からの敬意を表したい。
そして、この本に関わらせていただいた私は、マンモスラッキーである。

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:仕事