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映画評 「アンダードッグ 後編」 [映画評]

前編についての映画評で、前後編公開が好きになれないと書いた。
それでも、後編が圧倒的に面白ければチャラになる。

監督は、どうしても「『百円の恋』の」という形容詞がついて回る武正晴さん。
本作のオファーを受け、「またボクシングか」と思ったという。
と言いながら、「ホテルローヤル」より、数段気合の入った作品に仕上げてきた。
ボクシング映画と手が合うのだろう。
しかし、宿命的に比較されるであろう「百円の恋」と比べると・・・。

前編・後編合わせると4時間半にも及ぶ長尺である。
なにやらややこしい状況もてんこ盛り。
それが、胸に響かない。
時間はたっぷり長いのに、足りていない。
情報は山ほどあるのに、不足している。

伏線めいたものはきちんとは回収されず、
登場人物の心境の変化も今一つすとんと落ちない。
もやもやが広がる。

最後のボクシングシーンは盛り上がるのだが、
そこへの持って行き方もしっかり描かれていない。
だから、映画の中の客席ほどは盛り上がれない。
なんでも、2021年の元旦からAbemaTVで全8話の配信版が流されるらしい。
全貌を知りたければそちらを観ろということだろうか。
前後編で作っておいて、いくらなんでもそれはない。

ボクシングシーンは、迫力はあるのだがリアリティはない。
映画なのだから、ギリギリのリアリティは必要ないが、本作においてはもう少し真に迫ってもよかったように思う。

主演は、森山未來さん。
外れのない俳優さんであり、その信頼に応えている。本作の傷は森山さんによるものではない。
森山さんと絡む若手ボクサー役に北村匠海くん。
恋愛ものに引っ張りだこだった北村くんが、とんかつではコメディ、本作ではシリアス。演技の幅を広げている。
前編で売れない芸人役を演じたのが勝地涼さん。
印象的な役を印象的に演じ、ある意味この映画での勝者となった。
後編で全く絡まないのが実に残念である。

「アンダードッグ」は、いろいろなものを盛り込み過ぎて消化不良になった感がある映画。
監督も俳優も気持ちを込めた作品だと思うが、出来上がった作品は思いの強さとは比例していないと思う。
だから前後編公開はやめた方がいいのだ、
という意を強くした。

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